累風庵閑日録

本と日常の徒然

第三回オンライン飲み会

●第三回オンライン飲み会を開催した。参加者は瞬間最大で十名。ご新規さんが三名様いらっしゃって、ありがたいことである。今回のテーマは、データ共有である。各自の手元にある画像データ、動画データを、「たくのむ」で問題なく共有できることを確認した。ただし、あくまでも画面の共有であって音声は共有できない。

『ヒルダ・アダムスの事件簿』 M・R・ラインハート 論創社

●『ヒルダ・アダムスの事件簿』 M・R・ラインハート 論創社 読了。

 中編が二編収録されている。「バックルの付いたバッグ」は、失踪事件にまつわる奇妙なサスペンス。ロジックの興味には乏しく、状況の異様さと先の展開への興味とで読ませる。

 作者が仕掛けた(伏字)ネタは些細でありきたりだが、たったこれだけでも有るのと無いのとではかなり違う。この趣向のおかげで、ひと捻り加わっている。

「鍵のかかったドア」の方が面白かった。何が起きているのか、という興味で読ませるサスペンス。ヒルダが派遣された家にまつわる、大小様々な異様さ。ページの大半がそんな描写の積み重ねに充てられており、おかげで伏線も多い。ちょいとぞわっとくる真相も秀逸。

『死が二人を別つまで』 鮎川哲也 角川文庫

●『死が二人を別つまで』 鮎川哲也 角川文庫 読了。

 鮎川哲也名作選の第八巻である。伏線とロジックの面白さを主眼とする作品は、あまり短いとどうもあっけなさすぎるようだ。

「汚点」
 過去に仙台で五年暮らしたので、メインのネタには早い段階で気付いた。

「霧笛」
 犯人に直結する、シンプルでさりげない手がかりが秀逸。しかも指摘されてみれば、こんなにあからさまに書いてあるのに、と思えてくる。

「プラスチックの塔」
 (伏字)が取って付けたよう、という違和感はあるが、些細なもので。遺留品の解釈を巡って地道に堅実に捜査を進める展開は、私好みである。

「赤い靴下」
 動機が異様、というより犯人の人間性が異様。犯人が陥落する決め手がお見事。

 表題作「死が二人を別つまで」が収録作中のベスト。じっくり情報を積み重ねてゆくタイプが多い鮎哲作品には珍しく、切れ味の鋭さが光る。

『サイモン・アークの事件簿IV』 E・D・ホック 創元推理文庫

●『サイモン・アークの事件簿IV』 E・D・ホック 創元推理文庫 読了。

 一冊の本の感想は、ただその一冊の内容だけで定まるものではない。現在その時の気分や体調にも左右されるし、直前にどういう本を読んだかにも大きく影響を受ける。どうにも薄味だった千代有三の後に読むホックは、ミステリ趣味が甚だ濃厚で、そういった差のおかげもあって大いに楽しめた。これは面白い。これは嬉しい。こういうのだよ読みたいのは。

「黄泉の国の判事たち」
 長い間離れていた生まれ故郷が、もはや自分の街ではなくなっていることに気付く。そんな挿話がやけに沁みる。 

「ドラゴンに殺された女」
 (伏字)ネタの手がかりが実にお見事。伏線がいろいろあるのも嬉しい。収録作中であえて順位を付けるなら第二位としたい。 

「一角獣の娘」
 オープニングの強烈さと、真相にまつわる物語の厚みとを買う。

 「ロビン・フッドの幽霊」
 この作品が収録作中のベスト。二十本もの矢で射殺された死体、という事件が魅力的。真相の全体像が面白いし、伏線もしっかりしている。他の作品には動機面で減点したくなる部分もないではないが、この作品は動機も納得できる。

「死なないボクサー」
 大きな伏線がふたつあって、ひとつには脱帽、もうひとつにはあまり感心しない。どちらも気付かなかったけれども。前者は、指摘されればあまりにもあからさまで、気付かなかったのは全く降参。後者は、作者が上手くいくように書いたから上手くいったタイプの伏線である。

『千代有三探偵小説選I』 論創社

●『千代有三探偵小説選I』 論創社 読了。

 全体的に、どうも薄味。ロジックの興味も外連味もサスペンスも、豊富とは言い難い。辛気臭いブンガク趣味もまた少ないのはありがたいけれども。

 読んでいると期待値がどんどん下がってくる。そのおかげで、わずかでも目に留まる箇所があればそれなりに満足できるようになった。以下、ちょっとした伏線があるのが気に入った作品として、「肌の一夜」と「美悪の果」とを挙げておく。

「宝石殺人事件」と「死人の座」との二作は本書中では珍しくミステリ味が濃く、個人的な好みとしては双璧と言っていい。それぞれにいかにもな趣向が盛り込まれていて、読んでいて楽しい。上記のように期待値低めで臨むことが前提だけれども。

真紅の鱗形

●お願いしてた本が届いた。
『真紅の鱗形』 甲賀三郎 湘南探偵倶楽部
『人肉の腸詰』 妹尾アキ夫 湘南探偵倶楽部
アメリヤ・ジョーンズを憎んだ男』 E・ウォーレス 湘南探偵倶楽部

●今月の総括。
買った本:十三冊
読んだ本:十冊
 買ったのは私家版と同人誌と古本とをネット通販で八冊。出版社からの直販で五冊。リアル書店では新刊を一冊も買わなかった。

『本田緒生探偵小説選II』 論創社

●『本田緒生探偵小説選II』 論創社 読了。

 全体的に低調。「名刺」の軽快な味わいと「或る男の話」の不気味さとがちょっと面白かったが、それ以外にコメントを付けたいと思える作品には出会えなかった。

第二回オンライン飲み会

●第二回オンライン飲み会を開催した。今回のチェックポイントは回線の重さである。最近オンライン飲み会流行りで、専用ツール「たくのむ」の利用者がやけに増え、そのせいで金曜の夜などは動作が異様に重くなったと聞く。システム上の最大参加者十二名のところ、今回は瞬間最大十一名でやってみた。その結果、人によっては画像も音声も途切れがちな場面があったけれども、概ね問題なく動作していた。

 ツールでは部屋を建てるときに時間制限を設けることができる。今回は三時間に設定してみた。前回はタイムリミットまでやらずに終わったが、今回やけに盛り上がってしまって、あっという間に期限が来た。するとどうなるか。終了十分前に告知が表示され、時間になるとなんと、「2次会ボタン」が表示されるではないか。クリックすると何もなかったかの如く時間無制限で延長される。

 前回オンライン飲み会をやってみて、二次会に流れずにきっちり終わることを利点として挙げておいた。その認識は全く間違っていて、やる側が気を確かに持っていないとずるずるべったりにエンドレスに流れてしまうことが判明したのである。危ない。結局六時間も続けてしまった。なんたることか。

 それだけ続いたのも、楽しかったからである。またやりたい。頻度はどうするかという話題になって、なんとなく隔週くらいかなあという雰囲気だった。というわけで、第三回の募集を次の週末(5/2)、実施をその次(5/9)という想定で考えておく。