累風庵閑日録

本と日常の徒然

2016-01-01から1年間の記事一覧

『魔人』 金来成 論創社

●『魔人』 金来成 論創社 読了。 これは面白いぞ。全身緋色の魔人が跳梁するスリラーで、乱歩作品からの強い影響がうかがえる。魔人が孔雀夫人の動静を逐一手紙に書いてよこすところなんざ、まるで「陰獣」である。怪奇趣味もあるし、不可能興味もあるし、過…

休止して仕切り直し

●次に読むつもりの本が五百ページあって、平均的な読書ペースだと四日はかかる。その長さを考えるだけでちょいとしんどくて、二の足を踏んでいる。今日はいったん読書を休止して、気持ちを仕切り直すつもりでレンタルDVDの映画を二本観た。 ●最近カレー欲…

『蘭郁二郎集 魔像』 ちくま文庫

●『蘭郁二郎集 魔像』 ちくま文庫 読了。 前半はあまり作者の個性を感じられなかった。奇癖に執着して破滅する男だの、振られた女に執着して奇怪な殺人を犯す男だの、作品の多くが戦前探偵小説のある種典型である。そのなかで、怪談仕立ての「穴」と、ちょっ…

灯火管制

●書店に寄って本を買う。『灯火管制』 A・ギルバート 論創社『守銭奴の遺産』 E・フィルポッツ 論創社

ナイチンゲール

●論創社のサイトで、『横溝正史探偵小説選V』の目次が発表された。個人的目玉は、「博愛の天使 ナイチンゲール」だっっ!!! よくぞやってくれました。そしてもう一つ注目なのが、「探偵小僧」である。もちろん松野一夫の挿絵付き。この作品は挿絵あってこ…

戦後未収録中短編集3

●投票。 ●お願いしていた私家版の本が届いた。『戦後未収録中短編集3』 フリーマン 湘南探偵倶楽部

『太陽に向かえ』 J・L・バーク 論創社

●『太陽に向かえ』 J・L・バーク 論創社 読了。 ハードな味わいの、少年の成長物語。ミステリ味が極めて薄い。この手の小説は全く守備範囲外である。ノワールってのはこういう感じなのだろうか。知らんけど。ともかくも最後まで読ませるだけの魅力はあった…

『運河の追跡』 A・ガーヴ 論創社

●『運河の追跡』 A・ガーヴ 論創社 読了。 素晴らしいテンポのよさで、すいすい読める。金曜まで読んでいたチェホフのまだるっこさと比べるのは意味がないのだが、それでもつい比べてしまう。いろいろ野暮用があって読了するのに二日かかったけれども、読書…

『チェホフ/ドゥーセ』 東都書房

●『チェホフ/ドゥーセ』 東都書房 読了。 世界推理小説体系の第五巻である。ドゥーセの「スミルノ博士の日記」は先日読んだので、今回は読み残していたチェホフ「狩場の悲劇」を読んだ。いやはやどうにも、しんどいことしんどいこと。本を持ち歩くのが重く…

総括

●今月の総括。買った本:十三冊読んだ本:十冊 買う方は、私家版だの古本だのに手を出してしまってついつい増加気味。読む方は、月の初めにパソコンの移行作業で何日も費やしたから、スケジュールが窮屈になってしまった。

猫と女行者

●確認したいことがあったので、横溝正史の人形佐七もの「猫と女行者」を読んだ。読んでなるほど、と思う。 横溝正史の長編「迷路の花嫁」から、祈祷師殺しの要素のみを抽出して素材とし、新たに肉付けして物語を再構築したのが、「猫と女行者」である。「迷…

水芸三姉妹

●今月から新プロジェクト「横溝正史の『左門捕物帳』をちゃんと読む」を発足させる。昭和二十四年八月から二十五年三月まで、雑誌『日光』に全七話連載された「左門捕物帳」シリーズを月イチで読んで、改稿版人形佐七バージョンと比較してみようという趣向で…

『廃墟の歌声』 G・カーシュ 晶文社

●『廃墟の歌声』 G・カーシュ 晶文社 読了。 収録作の中では、ストーリーがしっかりしている作品が楽しめた。表題作や「一匙の偶然」辺りが秀逸。「魚のお告げ」は、ラヴクラフト作品にちょいちょいある、古代遺跡に潜っていくシーンの面白さを思い出す。最…

横溝正史探偵小説選IV

●予定通り午前中は東京に出て神保町へ。東京堂書店で、先行発売されていた『横溝正史探偵小説選IV』 論創社を買う。いつもならこんなせっかちな真似はやらずに通常発売を待つのだが、何しろ物が横溝正史の新刊なだけに、つい気が急いてしまった。それにし…

順延

●午前中は野暮用。っと、その前に、旧PCを郵便局へ持って行った。あとはマニュアルだの箱だのを捨てる作業が残っているが、それは雑誌・ダンボールを捨てる日に対応すればいい。事実上これで、パソコン移行作業は完了である。やれやれ。 ●午後から神保町に…

『被告人、ウィザーズ&マローン』 S・パーマー&C・ライス 論創社

●『被告人、ウィザーズ&マローン』 S・パーマー&C・ライス 論創社 読了。 面白い。何も引っかかるものがなく、面白い面白いとすいすいページをめくって読み終えて、あとに残るのは満足感だけ。キャラクターの魅力とストーリー展開とで読ませるタイプの作…

横溝正史探偵小説選発売予定

●Twitter上で、論創社さんから告知があった。論創ミステリ叢書第九十九巻は『横溝正史探偵小説選IV』だっ!!!素晴らしい。勝手にこの日記で宣伝させていただく。七月第三週には書店に並ぶ予定とのこと。幻のジュニア時代小説を雑誌未発表分を追補して初…

『幻の女』 横溝正史 角川文庫

●『幻の女』 横溝正史 角川文庫 読了。 今年の三月に、横溝正史の長編「迷路の花嫁」との絡みで短編「カルメンの死」を読んだ。この作品は、角川文庫『幻の女』に収録されている。一編だけ読んで放置していたこの本を、せっかくだから通読してみた。再読であ…

『小栗虫太郎集 完全犯罪』 ちくま文庫

●『小栗虫太郎集 完全犯罪』 ちくま文庫 読了。 年齢とともに食の好みが変わってくるというのは、よくある話だ。似たようなもので、小説の好みも年齢とともに変わってくるのかも知れない。虫太郎流の超論理に面白味を感じなくなり、気持ちがすっかり冷めてし…

「スミルノ博士の日記」 ドゥーセ

●朝からじんわりと暑い。こういう暑さも悪くない。まるで夏休みの朝のような雰囲気で、気分がいい。いまならまだ暑さもさほどではないから、こんな呑気なことも言ってられるのだ。●東都書房の世界推理小説体系第五巻から、ドゥーセの「スミルノ博士の日記」…

生落語と生玉葱

●午前中は読書と、ちょいと買い物。店員殿を相手にするのが、なんだかやけに気疲れしてしまった。午後は落語会。生の落語を聴くのは数年ぶりである。席料分以上は楽しめて、十分満足。●帰宅途中に書店に寄って、ラズウェル細木の『酒のほそ道』第三十九巻を…

『ママ、嘘を見抜く』 J・ヤッフェ 創元推理文庫

●『ママ、嘘を見抜く』 J・ヤッフェ 創元推理文庫 読了。 面白い。安心安定のヤッフェブランドである。些細な手掛かりから導き出される意外な秘密、という展開を途中で一度挟み込む、筋運びの上手さよ。解決部分を読んで分かる、伏線の意味が見えてくる面白…

『オトラント城綺譚』 ウォルポール 講談社文庫

●『オトラント城綺譚』 ウォルポール 講談社文庫 読了。 なるほどなるほど、ゴシック小説とはこういうものか。一度その祖型を読んでおこうと思って手に取った。描写も会話も大仰で回りくどく、ちと読むのに骨が折れる。けれど、ストーリーはダイナミックなう…

『恐怖の島』 サッパー 論創社

●『恐怖の島』 サッパー 論創社 読了。 登場人物もストーリーも類型的な、ありきたりのスリラー。そう思って読み進めていたら、実は全然違っていた。途中からなんと、南米の孤島を舞台にした正統派モンスター・ホラーになってしまうのである。やあ、こいつは…

レバ刺しの丸かじり

●特に買う予定の本がないのに気まぐれで書店を覗き、『レバ刺しの丸かじり』 東海林さだお 文春文庫 を衝動買い。できるだけ本を増やさないよう、衝動買いはやっちゃいけないと自分に課しているのに、ついうっかり……

『底無沼』 角田喜久雄 出版芸術社

●『底無沼』 角田喜久雄 出版芸術社 読了。 角田喜久雄を読むのは十一年ぶりで、前回の印象はあまり覚えてないけれど、こんなにねっとりした文体だったのか。そして、こんなに面白かったのか。読んでよかった。まっこと、本は読むべし、と思う。それにしても…

福井三重旅行

●金曜土曜で、北陸新幹線に乗って三重県に行ってきた。 ●金曜の新幹線で金沢まで行き、すぐに在来線の特急に乗り継いで福井まで移動する。福井でうろうろして、関連する三件の目的をこなす。これが今回の旅行の、ダブルメインイベントの一つ目なのだが、詳細…

屍の記録

●お願いしていた本が届いた。『屍の記録』 鷲尾三郎 戎光祥出版ミステリ珍本全集の第十二巻である。今回でシリーズはひと区切りなんだそうな。それにしても珍本全集は、まことに素晴らしい企画であった。よくもまあ、こんなマイナーな本の数々を刊行してくれ…

『被告側の証人』 A・E・W・メイスン 論創社

●『被告側の証人』 A・E・W・メイスン 論創社 読了。 一応殺人事件は発生するが、普通の意味でのミステリ味は極めて薄い。だが、なんとも面白いのだこれが。曖昧な話で恐縮だが、たぶん阿刀田高だったか、すべての小説はミステリだという言説をどこかで読…

嵐の館

●書店に寄って本を買う。『嵐の館』 M・G・エバハート 論創社『闇と静謐』 M・アフォード 論創社『白骨の処女』 森下雨村 河出文庫今月はパソコン対応に時間をとられてあまり読めていないにもかかわらず、買う方はしっかり買っている。 ●自分用メモ:パソ…