累風庵閑日録

本と日常の徒然

2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

正を中断

●今月の総括。買った本:九冊読んだ本:十冊十一冊目を読む時間だけはあったのだが、フィクションをきっちり受け入れて楽しむための気力がなかった。 ●論創ミステリ叢書の西尾正第二巻を読んでいる。先日読んだ第一巻で既に分かっていたことだが、どうもこの…

不木を中断

●今日はジムに行く予定だったが、どうにも気持ちが乗らず、とうとうサボってしまった。ジム通いを再開した六月以降、初めてのことである。いかんいかん。 ●小酒井不木を読んでいる。長編と複数の短編とが収録されている本だが、短編部分を読み終えるとなんだ…

『はらぺこ犬の秘密』 F・グルーバー 論創社

●『はらぺこ犬の秘密』 F・グルーバー 論創社 読了。 ある証言によって、事件にまつわる裏面の状況がパッと見える展開にはちょっと感心した。その証言をする人物が(伏字)だというのも、意外で面白い。全体の解明には至極あっさり片付けられている部分もあ…

「横溝正史が手掛けた翻訳を読む」第三回

●午前中は野暮用。 ●午後からは横溝プロジェクト「横溝正史が手掛けた翻訳を読む」の第三回をやる。 ◆「残りの一枚」 エフ・ヂ・ハースト(大正十四年『新青年増刊』) 大富豪バーンスは、とある事情で甥ロバートに対して大変なご立腹。遺言状を書き換えて、…

『物しか書けなかった物書き』 R・トゥーイ 河出書房新社

●『物しか書けなかった物書き』 R・トゥーイ 河出書房新社 読了。 奇妙奇天烈な作品揃いの、秀作短編集。普通のミステリ短篇ならば、意外な結末を鋭い切れ味で提示して、ストンと理に落ちるってパターンがよくある。ところが、本書に収録されている作品群は…

悪意の夜

●朝から病院。三ヶ月に一度の定期通院である。といっても薬を処方してしてもらうだけだから、お医者殿と向かい合っている時間は二分ほどしかないけれども。 ●書店に寄って本を買う。『悪意の夜』 H・マクロイ 創元推理文庫マクロイも積ん読が大分溜まってき…

『疑惑の銃声』 I・B・マイヤーズ 論創社

●『疑惑の銃声』 I・B・マイヤーズ 論創社 読了。 これは凄い。その衝撃は、ミステリのネタだとかストーリーの捻りだとかとはまるで別次元である。この題材をこう扱うか、という嫌な嫌な味の驚きがある。約八十年前のアメリカの価値観が、むき出しのまま現…

人食いバラ

●取り寄せを依頼していた本が届いたというので、書店に寄って受け取ってきた。『人食いバラ』 西條八十 戎光祥出版「少年少女奇想ミステリ王国」の第一巻である。気になる今後のラインナップは、野村胡堂、高垣眸、だそうで。

延々読書旅

●JRの「18きっぷ」を使って、延々電車に乗って延々本を読む旅、ってのに出かけてきた。行き先は特にはっきりとした理由もなく、近すぎず遠すぎずの場所として静岡県の清水を選んだ。 本は論創海外の長編を手に取る。予想以上に順調に読書を進めつつ、十…

『大庭武年探偵小説選II』 論創社

●『大庭武年探偵小説選II』 論創社 読了。 やはり好みからいって、事件の謎とその解決とを主題とした作品の方が点数が高くなる。特に「歌姫失踪事件」は、走行中の自動車からの人間消失という不可能興味と気の利いた結末とで、収録作中のベスト。読者が真…

午前零時の男

●谷中の全生庵に、幽霊画の展示を観に行ってきた。今回の主目的は、去年九十四年ぶりに発見されたという、鏑木清方の幽霊画である。うつむいて顔を見せないまま、捧げ持つように茶碗を差し出す女性像。一見普通の人物画のようだが、青白く骨張った指が尋常の…

『章の終わり』 N・ブレイク ハヤカワ文庫

●『章の終わり』 N・ブレイク ハヤカワ文庫 読了。 なんと地味なオープニングか。探偵ナイジェル・ストレンジウェイズが取り組むのは、印刷直前の原稿に細工をしたのは誰か、という謎である。背表紙の粗筋には中盤以降の展開もしっかり書いてあるのだが、事…

はらぺこ犬の秘密

●書店に出かけて本を買う。『いにしえの魔術』 A・ブラックウッド アトリエサード『疑惑の銃声』 I・B・マイヤーズ 論創社『はらぺこ犬の秘密』 F・グルーバー 論創社グルーバーのジョニー&サムシリーズの未訳作品が、今後論創海外から全て刊行されるそ…

『江戸川乱歩の推理教室』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫

●『江戸川乱歩の推理教室』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫 読了。 江戸川乱歩が何らかの形で関わった犯人当てミステリを集めたアンソロジーだそうで。収録作の大半は、河出書房刊の江戸川乱歩編『推理教室』から採っている。以前、数作が割愛された河出…

『戸田巽探偵小説選I』 論創社

●『戸田巽探偵小説選I』 論創社 読了。 収録作中のベストは「第三の証拠」で、構成と切れ味とが上々の出来栄え。「出世殺人」は、全体がブツ切りのようでちと残念だが、様々な人物の出世欲が互いに影響を及ぼし合う展開は、これも構成の面白さがある。「三…

『死体は散歩する』 C・ライス 創元推理文庫

●『死体は散歩する』 C・ライス 創元推理文庫 読了。 相変わらずの疾走感が素晴らしい。途中あまりにも強引な展開にひっくり返りそうになったけれど、流れに乗って楽しむつもりならこの程度のことを気にしちゃいけない、と思い直す。いつまで経っても結婚の…

不思議なシマ氏

●取り寄せをお願いしていた本が書店に届いたという連絡があったので、受け取ってきた。『不思議なシマ氏』 小沼丹 幻戯書房それにしても結構な値段だこと。

『西尾正探偵小説選I』 論創社

●『西尾正探偵小説選I』 論創社 読了。 作者の志向は情念の物語を書くことにあるようだ。ロジカルな面白さはほとんどない。だからといってつまらないと断じるのは視野の狭い読み方だとは思うが、好みから外れているのは事実。ねっとりとした書きっぷりで一…

『マタパンの宝石/鐘塔の天女』 ボアゴベ 春陽堂

●『マタパンの宝石/鐘塔の天女』 ボアゴベ 春陽堂 読了。 昭和四年刊行の、探偵小説全集第十七巻である。「マタパンの宝石」については先日書いた。 「鐘塔の天女」 本文の振り仮名によると、「とうのエンゼル」と読ませたいらしい。物語は、ノートルダム寺…

人間ドック

●朝から病院。年に一度の人間ドックである。分かっちゃいたけど、鼻から挿す胃カメラはえげつない。今回四度目だが、なかなか慣れるもんじゃない。 体重も体脂肪率も、前年より増えている。やはり、ジム通いをサボりっぱなしだった影響は甚大である。六月か…

ボアゴベ「マタパンの宝石」

●春陽堂の探偵小説全集第十七巻から、ボアゴベの「マタパンの宝石」を読む。再読である。四年前、博文館の世界探偵小説全集『ボアゴベイ集』に「海底の黄金」の訳題で収録されたのを読んでいる。以下その時の感想を、文言を微修正して再掲しておく。 内容は…