累風庵閑日録

本と日常の徒然

2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

年内最終更新

●年内最終更新である。今年は社会的には大変な波乱の年であったが、個人的にはさしたる影響もなく、むしろ電車通勤が減って楽になったほどである。 飲みにも行かず旅行にも行かなかったので、生活のコストが大幅に下がった。金を使った対象は、生活必需品と…

細切れに読む

●論創社の『加納一朗探偵小説選』は、長編が三作も収録されていて一気に通読するのはしんどい。来年に向けて細切れに読んでいくことにして、まずは「ホック氏の異郷の冒険」を読んだ。面白かった。感想は全部読んでから。

『歴史の話』 網野善彦 鶴見俊輔 朝日文庫

●頭がフィクション疲れを起こしているので、口直しに手に取った『歴史の話』 網野善彦 鶴見俊輔 朝日文庫 を読了。 「日本史を問い直す」という副題が付いた対談集である。読み手に相応の知識があることを前提に語られているので、半分くらいしか理解できな…

『知られたくなかった男』 C・ウィッティング 論創社

●『知られたくなかった男』 C・ウィッティング 論創社 読了。 まず、個人的に読んだタイミングが良かった。オーソドックスな謎解き長編ミステリを読むのがちょいと久しぶりなので、その新鮮さだけで面白さが増す。だがそんな要素が無くても、これほどしっか…

『子供たちの探偵簿1 朝の巻』 仁木悦子 出版芸術社

●『子供たちの探偵簿1 朝の巻』 仁木悦子 出版芸術社 読了。 まったく上質の短編集であった。子供が主人公だがジュブナイルではないミステリを集めた、全三巻本の第一巻である。「かあちゃんは犯人じゃない」と「誘拐犯はサクラ印」とは、さりげない伏線が…

「鉄人Q」

●光文社文庫の江戸川乱歩全集で、少年探偵団もの「鉄人Q」を読んだ。いい歳こいたおっさんが読んで楽しめるような作品ではないので、内容についてはコメント無し。 ひとつだけ、終盤で明智小五郎が鉄人Qの数々の悪さを「あんなばかばかしいこと」と評して…

『死のジョーカー』 N・ブレイク ポケミス

●『死のジョーカー』 N・ブレイク ポケミス 読了。 様々ないたずらや悪質な嫌がらせが村に横行する。並行して、登場人物それぞれの造形と相互の関係とがじっくり描かれる。正直なところこういう展開は好みではないのだ。事件とも言えないような出来事がメリ…

『飛鳥高探偵小説選III』 論創社

●『飛鳥高探偵小説選III』 論創社 読了。 いろいろあって読書時間が確保できず、読了まで四日もかかってしまった。だが、そうやってじっくり読んだのが返ってよかったかもしれない。メインの長編「死刑台へどうぞ」は、なかなかの秀作。なによりもまず、…

『真紅の腕』 アルス・ポピュラアー・ライブラリー

●『真紅の腕』 アルス・ポピュラアー・ライブラリー 読了。 大正十三年に刊行されたミステリアンソロジーである。五編の中・短編が収録されている。表題作、ジー・エフ・アワースラー「真紅の腕」はちょっとした珍品。殺人予告の電話、二階の部屋を足がかり…

『モンタギュー・エッグ氏の事件簿』 D・L・セイヤーズ 論創社

●『モンタギュー・エッグ氏の事件簿』 D・L・セイヤーズ 論創社 読了。 題名はこうなっているが、実際は全十三篇のうちエッグ氏ものは六編のみ。こいつがなかなか手強い。少ない分量の中に事件に関連する情報が高密度で詰め込まれている。ページに余裕がな…

『最後の一壜』 S・エリン ポケミス

●『最後の一壜』 S・エリン ポケミス 読了。 粒揃いで上質の短編集。捻りと切れ味とで勝負する作品も、人生を感じさせる作品も、人間心理を突き狂気を描く作品も、上々の出来である。収録作中のベストは表題作「最後の一壜」。他に特に気に入ったのは「12…

『脱獄王ヴィドックの華麗なる転身』 V・ハンゼン 論創社

●『脱獄王ヴィドックの華麗なる転身』 V・ハンゼン 論創社 読了。 ヴィドックの伝記小説である。ヴィドックについてはぼんやりと、盗賊から警察に転身したという程度のイメージしか持っていなかった。その生涯を読むことがまず面白い。単純に、物事を知る面…

『甲賀三郎探偵小説選II』 論創社

●『甲賀三郎探偵小説選II』 論創社 読了。 気早の惣太シリーズ全七編が、意外なほど面白い。わずか十ページほどの小品にもかかわらず、展開の起伏で読ませるのはご立派である。全体に漂う軽みも、気楽に読めていい感じ。中でもベストは最終作「惣太の嫌疑…

狭夜衣鴛鴦剣翅

●お願いしていた本が二方面から届いた。 『狭夜衣鴛鴦剣翅』 並木宗輔 『脱獄王ヴィドックの華麗なる転身』 V・ハンゼン 論創社 ●書店にて、創元推理文庫の新刊『ヴァルモンの功績』をチェック。文庫化に際して追加されたホームズパロディの素性を確認する…

『見知らぬ乗客』 P・ハイスミス 角川文庫

●『見知らぬ乗客』 P・ハイスミス 角川文庫 読了。 しんどい本。ねちこい緊迫感が、読んでいて疲れる。サスペンスの質が次々と変わってゆくのが、しんどさを維持し中だるみしない。その質とは、殺人者の興奮、殺人を要求する脅迫、日常に侵入する異分子、良…