累風庵閑日録

本と日常の徒然

2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

今月の総括

●今月の総括。買った本:七冊読んだ本:十冊 積ん読が三冊減った。

「横溝正史が手掛けた翻訳を読む」第二十回

●横溝プロジェクト「横溝正史が手掛けた翻訳を読む」の第二十回をやる。今回は、昭和十五年に博文館から出た『風雲ゼンダ城』から、第一部「ゼンダ城の虜」を読む。 うむ、こいつは面白い。欧州の架空の国ルリタニアを舞台にして、今となってはベタなそっく…

鉄の門

●確定申告の書類一式を、税務署の時間外収受箱に放り込んできた。今年は五桁半ばの還付金が戻ってくる。 ●電車に乗って街に出て、書店に行って本を買う。 『鉄の門』 M・ミラー 創元推理文庫 『幻想と怪奇1』 新紀元社 今は怪奇系の本も雑誌も買わないこと…

『丘美丈二郎探偵小説選II』 論創社

●『丘美丈二郎探偵小説選II』 論創社 読了。 最も気に入った作品は「耳飾りの女」で、趣向沢山で意欲的な佳編。巻末解題で指摘されているように描写はちと心細いが、(伏字)トリックに挑んでいる点も買う。 他に気に入った作品にコメントを付けるならば、…

『わが子は殺人者』 P・クェンティン 創元推理文庫

●『わが子は殺人者』 P・クェンティン 創元推理文庫 読了。 これは傑作。状況から判断すると殺人事件の犯人としか思えない息子。そんな彼の無実を信じ、懸命に真犯人を探究する父親の物語である。主人公ジェークに襲い掛かる苦難と衝撃の数々が、尋常ではな…

『大下宇陀児 楠田匡介 ミステリー・レガシー』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫

●『大下宇陀児 楠田匡介 ミステリー・レガシー』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫 読了。 大下宇陀児「自殺を売った男」が、実に面白い。主人公に持ち掛けられた、「自殺を売ってくれ」という奇妙な儲け話。計画では、表向き主人公が自殺して死体が発見さ…

『桜田十九郎探偵小説選』 論創社

●『桜田十九郎探偵小説選』 論創社 読了。 巻末解題によれば桜田十九郎の作品は、海外雄飛思想を背景にして明治期に勃興した冒険小説の流れを汲むのだという。最初の四編くらいは国策臭時局臭のノイズがなく、素直に楽しめた。たとえば「燃えろモロッコ」。…

『芥川龍之介 妖怪文学館』 東雅夫編 学研M文庫

●『芥川龍之介 妖怪文学館』 東雅夫編 学研M文庫 読了。 十二月から細切れに読んでいたのを、ようやく読了。怪奇小説作家としての芥川龍之介に焦点を当てた作品集である。小説の部/怪異篇では、怖さや奇怪さを前面に出した作品より、想像を刺激する不気味…

クリヴドン事件

●書店に寄って本を買う。 『平林初之輔 佐左木俊郎 ミステリー・レガシー』 山前譲編 光文社文庫 ●お願いしていた本が届いた。 『クリヴドン事件』 オークレイ夫妻 湘南探偵倶楽部 『胸の白薔薇』 M・D・ポースト 湘南探偵倶楽部 『盲地獄』 大下宇陀児 湘…

『グラン・ギニョール』 J・D・カー 翔泳社

●『グラン・ギニョール』 J・D・カー 翔泳社 読了。 中編の表題作以外に、小説三編と中編エッセイとが収録されている。小説は、大仰な怪奇小説「悪魔の銃」、ちょいと捻りのある歴史ロマン「薄闇の女神」、カーがプロ作家として発表した最も短い小説だとい…

『亀は死を招く』 E・フェラーズ 論創社

●『亀は死を招く』 E・フェラーズ 論創社 読了。 ううむ、一応は意外な犯人だし、一応は犯人を示す手がかりが申し訳程度にあるけれども、どうも全体が薄く平板である。真相を構築するのに、手がかりの石を推理のモルタルでひとつひとつ組み上げていくような…

『傑作短編集』 伊藤秀雄編 ちくま文庫

●『傑作短編集』 伊藤秀雄編 ちくま文庫 読了。 明治探偵冒険小説集の第四巻で、副題が「露伴から谷崎まで」としてある。オーソドックスな探偵ものから時代物、さらには怪談咄まで、意外なほどバラエティがあって飽きない。馴染みのない明治の文章は、たまに…

『透明人間大パーティー』 鮎川哲也編 講談社文庫

●『透明人間大パーティー』 鮎川哲也編 講談社文庫 読了。 透明人間をテーマにした、ミステリ・SF選集である。 槙尾栄「透明の人間」は、翻案なのだろうか。ウェルズの「透明人間」を読んだことがないので判断できないのだが、そちらの粗筋をネットで読む…

『金来成探偵小説選』 論創社

●『金来成探偵小説選』 論創社 読了。 「楕円形の鏡」には感心した。殺人の趣向はちょいと気が利いているが、さほど意外ではない。その部分よりも、全体を貫くメインのネタがなかなか強烈である点を評価したい。この作家はこんな突き抜けた作品を書くのかと…