累風庵閑日録

本と日常の徒然

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

今月の総括

●今月の総括。買った本:八冊読んだ本:十一冊 数か月前から細切れに読んできたドイル全集第三巻を読み終えた分だけ、いつもの月より一冊多かった。

葬られた女

●柏書房の横溝正史『蝶々殺人事件』から、由利先生ものの中絶作「模造殺人事件」だけを抜き読み。「蝶々殺人事件」は戦前の事件だが、こちらは戦後が舞台だ。金田一耕助が存在せず、由利先生が等々力警部の良き協力者の座を占めている世界は、ちと不思議な味…

『地中の男』 R・マクドナルド ハヤカワ文庫

●『地中の男』 R・マクドナルド ハヤカワ文庫 読了。 これはどうも、大変な作品である。複数の家族間の人間関係が滅茶苦茶に入り組んで、からみ合いもつれ合って複雑怪奇。ロスマクの作劇法が天井を突き抜けた感がある。その複雑さは事件の全体像にも及び、…

『仮面劇場の殺人』 J・D・カー 原書房

●『仮面劇場の殺人』 J・D・カー 原書房 読了。 いつものカーの味わいで楽しい。たとえばクライマックスの舞台に(伏字)を選ぶのも、あるいはチェスタトンの遠い谺が聞こえてきそうな真相も。 初読ではまず気付かんだろうという伏線もカーの持ち味である…

『死の十三楽章』 鮎川哲也編 講談社文庫

●『死の十三楽章』 鮎川哲也編 講談社文庫 読了。 クラシック音楽をテーマにしたミステリアンソロジーである。私はそっち方面はまるで知らんので、音楽に夢中になる登場人物達にどうも共感できない。そうなると、同じような題材で同じように叙情味が勝った作…

『ドイル全集3』 C・ドイル 改造社

●『ドイル全集3』 C・ドイル 改造社 読了。 「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第十六回として、第三巻を読み終えた。最後の作品は「クルムバアの悲劇」である。訳者は延原謙。以前別の本で読んだときはあまり感銘を受けなかったけれども、再…

『ボニーとアボリジニの伝説』 A・アップフィールド 論創社

●『ボニーとアボリジニの伝説』 A・アップフィールド 論創社 読了。 正直なところ、ミステリとしての魅力はあまり感じなかった。この本の面白さは、アボリジニと白人との、時に友好的で時に緊張をはらんだ関係にある。ふたつの民族ふたつの文明の狭間に、興…

『追われる男』 G・ハウスホールド 創元推理文庫

●『追われる男』 G・ハウスホールド 創元推理文庫 読了。 ちょいとしんどい本であった。つまらなくて読み進めるのがしんどいのとはまるで逆で、主人公の過酷な境遇とひりひりするような緊迫感とがしんどいのである。後半になると舞台はほとんど固定されて動…

『黒き瞳の肖像画』 D・M・ディズニー 論創社

●『黒き瞳の肖像画』 D・M・ディズニー 論創社 読了。 老女の遺した日記によって、彼女の少女時代からの人生をたどる。それなりに起伏のあるメロドラマで下世話な面白さはあるが、ミステリの面白さはない。というのが終盤までの感想である。 だが読み終え…

『最後の一撃』 E・クイーン ハヤカワ文庫

●『最後の一撃』 E・クイーン ハヤカワ文庫 読了。 そもそもの発端から解決までに半世紀かかるという期間設定がダイナミックで、関係者の後年の情況を読むと諸行無常……と思う。そりゃあクイーン青年も歳をとるわけだ。 実は(伏字)だったという意地悪クイ…

『姿三四郎』 富田常雄 新潮文庫

●『姿三四郎』 富田常雄 新潮文庫 読了。 日本伝紘道館柔道の創始者矢野正五郎の活躍をいわば前史編として描き、本編に至って彼の弟子で柔道の天才姿三四郎の成長と闘いとをつづる大長編。これがもう、はちゃめちゃに面白い。 ベタな展開をどんどん盛り込ん…