本格ミステリコレクションの第一巻である。粒揃いの、文字通り名作選。奇抜なトリックがあり、ロジックへのこだわりがある。それらの支えとなる背景の書き込みもしっかりしている。堅実な描写のなかにいかにもミステリらしい真相がはまり込み、地に足の着いた奇天烈とでもいうべき味わいになっている。また、必ずしも勧善懲悪でなかったり最後に一捻りがあったり、短編ならではの切れ味を感じさせてくれる作品がちょいちょいあるのも嬉しい。まあ中には、そんなに上手いこといくんかいな、と思ってしまう作品がいくつかあったけれども。
「犠牲者」が一番楽しく読めた。滞在先の温泉場で事件に遭遇するという設定は、もうそれだけで嬉しくなる。どこか鄙びた温泉で一週間くらい滞在して退屈したいという願望の反映なので、私の好みというしかない。
●今月の総括。
買った本:十一冊
読んだ本:六冊
今月は後半になって本を存分に読めるようになったことがとにかく嬉しい。読める。読めるぞ。ぐいぐい読める。