累風庵閑日録

本と日常の徒然

『蛇神様』 高木彬光 東京文藝社

●いつもの通り五時に起床。まだ蝉も鳴き始めておらず、国道の車の音が遠く響いてくる以外は静かな夏の朝である。しばらくポメラで旅行記を認めてから、さて、朝飯前にひとっぷろ浴びようか。昨日あんなに熱かった風呂が、今朝はどうした訳だかほどよい湯加減になっている。しっかり浸かって大地の恵みを体で味わう。

●朝食は何の変哲もない内容。旅館の朝食はこの当たり前が嬉しい。しっかり喰って満足して、部屋に戻ってくつろぐ。九時半頃までのんびりぐだぐだして、チェックアウト。十時過ぎの電車に乗るために、ゆっくり歩いて駅に向かう。時間に余裕があるので、そこらを散歩して田舎の夏の朝を楽しむ。古川で新幹線に乗り換えて帰宅。

●行きは切符を無くしたり炎天下を歩いてへとへとになったりしてずっこけたけれど、終わってみれば素晴らしい夏休みであった。

●それにしても真夏に温泉は、暑さと熱さが困りものである。行くならば雪の消えた早春か、緑萌え薫風の吹く初夏、あるいは朝晩冷え込み始める晩秋辺りがいいね。

真夏の酷暑の時期に行くならば、冷泉がいい。福島磐梯熱海共同浴場「元湯」か、同じく福島の阿武隈山地の中腹にひっそりとある湯治場、湯岐(ゆじまた)温泉か、これは行ったことがなくて是非一度行きたいのだけれど、山梨県は身延にほど近い下部温泉などがよろしかろう。下部温泉、誰か一緒に行きませんか。

●『蛇神様』 高木彬光 東京文藝社 読了。

面白かった。人間関係が複雑に入り乱れ、謀略もあり裏切りもあり、誰が敵やら味方やら。蛇神の正体は何者か、一党の目的は何か、生きているように動いて喋る蝋人形の秘密は、などの興味もあって、初めて読む高木時代小説はなかなかのものであった。