累風庵閑日録

本と日常の徒然

金田一耕助自由研究

●今日は「18きっぷ」を使ってちょっとした小旅行に行く。今まで野暮用野暮用で使う機会がなかった切符を、八月中旬にしてようやく使うことができる。

朝もはよから延々電車に乗り、わずかに色づき始めた田圃を眺めて夏の終わりを感じつつ、たどり着いたは千葉県佐原駅。今回の目的は香取神宮である。神社行きバスの車窓から眺めた佐原の街は、想像よりもずっとこぢんまりしており、また想像よりもずっと魅力的な街並みであった。伝建地区(重要伝統的建造物群保存地区)に指定された、趣のある小都市である。

●十分ほどで香取神宮に到着。参道を取り巻く鎮守の森は、県の天然記念物である。老杉亭々として陽を遮り、ある種の人達が”マイナスイオン!”と叫びそうな森の気に満ちている。今日の天気は曇りで暑くなく、しのぎやすいのは嬉しい。だがむしろ炎天極熱の日の方が、鎮守の森の涼気が際だったであろう。

重要文化財の楼門と本殿とを眺める。本殿は去年修復を施されており、檜皮葺の屋根は整然として美しく、艶消し黒をベースに金金具で装飾を施された佇まいは異様なまでの魅力があって、目が引きつけられる。

●本当は十分に時間を確保して、この佐原の街を徘徊散策したいところだが、今日は夕方に別件の用事がある。駅近くの飯屋で昼飯を喰って帰路に就くことにする。

●再び延々電車に乗り、いったん帰宅してシャワーと着替え。すぐさま駅に向かって東京方面の電車に乗る。横溝系同人誌の打ち上げがあるのだ。今回は総勢七名のこじんまりした宴会である。大人数の会でありがちな、会話が複数のグループに分かれることもなく、話題が分散発散することもなく、かなり濃密な横溝話ができた。

同人誌主催のお方の志とモチベーションが高く、いろいろやりたいことを語っておられる。こうやって牽引役がいると、物事はいろいろ面白い発展をするものだ。お手伝いはさせていただきまっせ。

店のラストオーダーが来るまで居座って歓談倦むところを知らず。皆さん喋り疲れた辺りでお開き、流れ解散となる。お疲れさまでした。終電二本前の電車で帰宅。余談だが、今日は都内の電車に乗るのにも「18きっぷ」が使えて追加の電車賃がかからないのであった。

●飲み会の場で入手した『金田一耕助自由研究 Vol.2』をぱらぱらめくる。自分の中では、横溝関連で今一番ホットな話題が「女シリーズ」の改稿ネタなので、木魚庵氏の「「女」シリーズ概説」がとてもためになった。