累風庵閑日録

本と日常の徒然

掛川城

●昨日帰宅が遅かったにも関わらず、今朝も早起きする。「18きっぷ」を使って、一泊旅行に出かけるのだ。いつまで経っても切符を使う機会が得られないから、半ば力業で昨日から三日連続の旅行を設定してやった。忙しいことである。

●電車に乗って東海道をひたすら西へ進む。昼前にようやくたどり着いたのは、静岡県掛川の街である。今回の目的は、掛川城に残されている二の丸御殿だ。江戸時代の御殿建築は、掛川を含めて四カ所しか残されていないのだそうな。内部は襖を取り払って広々と開けっ放しになっており、風が通って爽快である。畳にべったりと座り込んで、天守を見上げながらしばしぼんやりする。縁側に出られないのがちと残念。

●一通り見学したら、次は掛川城天守に足を運ぶ。今までに現存十二天守のうち六ヶ所を回ったが、城巡りにさほど強いモチベーションはない。旅行のネタとしてなんとなく続けているだけである。嗜好としては天守よりも、今回の御殿建築のような人の住処の方が面白い。その面白さは、自分が実際にこういう場所に住む暮らしを妄想できる点にある。

江戸時代の遺構である現存天守ですら”なんとなく”なので、明治以降の再建城郭は守備範囲外である。眼中にないといっていい。そしてこの掛川城は平成になってからの再建である。これがもしコンクリートなんぞを使った近代建築なら、端っから無視するところだ。ところがなんとこの城、外観を当時の資料に忠実に再現した木造建築だという。そういうことなら表敬訪問しておこうと思う。中に入って分かるが、使われている建材がまだ白々として表面が滑らかで、ああ新築なんだね、と思う。最上階から掛川の街を見下ろす眺めを楽しむ。

●さて、本日のメインイベントは完了した。まだ時間があるので、掛川城から駅を挟んで反対側、掛川花鳥園に行くことにする。今日は夏休みだし日曜だし、大勢の客が詰めかけている。あまりに混雑しているので建屋内で鳥を眺めるのを早めに切り上げ、屋外のエミュー飼育場に行く。ここは客が自由に中に入れるので、エミューのすぐ側に近づいてまじまじと眺めると、あいつら喉の奥でグルルル……と低く鳴いていてちと不気味である。

エミュー.jpg

●早めにホテルにチェックインし、一眠りしてからコーヒーを淹れ、昨日読み始めた本の続きを少し読む。ホテルに泊まるときは、市販の一人用ドリップコーヒーパックを持参することにしている。

夜は静岡名産を集めたという居酒屋に飲みに行く。カウンターの隣に座っていた先客の親父殿が、亭主相手に「昔は馬鹿をやった自慢」を延々語っていて喧しく、気分が乗らずに酒も肴もいまいち楽しめなかったのは巡り合わせが悪かった。