累風庵閑日録

本と日常の徒然

『戌神はなにを見たか』 鮎川哲也 講談社文庫

●『戌神はなにを見たか』 鮎川哲也 講談社文庫 読了。

いつもの堅実な鮎川調で安定の読み応えだが、エピソードが多くてちっとばかし話が発散してしまったようだ。根本的な動機が判明する過程は面白いが、こういう犯罪を構成した動機には違和感がある。個人的には、舞台の一つとなった奥津に行ったことがあるので興味深く読めた。二年前の冬、折り返しの家城行きバスを待つ時間を潰すため、小雪舞う奥津の集落を歩いたあの時の情景を思い出す。