●六時前に宿をチェックアウトして、札幌駅へ向かう。当初の予定では滝川まで各駅停車で移動するつもりだったが、なんだかそれも面倒になった。自由席特急券千円ちょっとを奢って、特急に乗ることにする。
●滝川で二時間近く待ち時間がある。外は雨なのでうろうろする気にもならない。ひたすら待合室のベンチに座って、時の過ぎるのを待つ。朝飯はあらかじめ存在を確認しておいた、待合室の一角にある立ち喰い蕎麦屋で喰う。蕎麦の麺そのものは旨いのに、天麩羅だの汁だのがいろいろ惜しくて残念。
●滝川から長途八時間半、釧路まで行く各駅停車に乗り込む。乗客の大半は、独特の空気感をまとって一目で分かる鉄の人達である。九時半過ぎにゆるゆると発車した一両のディーゼルカーは、富良野でもう一両追加して二両編成になって、延々走り続ける。人跡稀な原野山林を貫き、狩勝峠から遥か十勝の地を見下ろし、広大な農地を遠望して、列車は悠々と走る。帯広を過ぎ池田を過ぎると、終点釧路まではあと約三時間である。
●三時間、延々鉄道に乗り続けるというのはちとしんどいことである。東京から新幹線に乗ると、三時間といえば盛岡や岡山に着いてしまう。ところが今乗っているこの列車、これからもう三時間乗るというのは、延々五時間半乗り続けたあとの話なのである。
●たいがい疲れて朦朧としていても、厚内駅を過ぎてから眼前に展開する太平洋と湿地の風景を観ると目が覚める。日がすっかり暮れきった頃に釧路に到着。この街では古本屋を二軒覗いて、買うべき角川横溝はなし。
●今晩の食事はスーパーの惣菜で済ますことにする。ホテルの人に訊いたスーパーは歩いて七、八分、繁華街から離れた場所にあった。総菜コーナーに並んでいる品はどれもあまり魅力がなく、いっそ居酒屋に入っちまおうかとも思ったが、今から繁華街まで歩いて引き返すのもしんどい。面倒臭くなって、どうでもいい惣菜でどうでもいい晩飯を喰う。肴が貧弱な分、酒に力が入ってついつい飲み過ぎ。何をやっておるのか。