ようやく”新”にたどり着いた。このシリーズは、「鮎川哲也監修」の文字がある三巻目まで付き合うつもりである。今回は全く期待していなかったおかげで、そこそこ面白かった。
網浦圭「時刻表のロンド」、井上宗一「水曜日の子供」がよく練られていて伏線沢山で秀逸。園田修一郎「東京不思議DAY」は、強烈な一発ネタがツボにはまってしまった。長谷川順子/田辺正幸「暗号名『マトリョーシュカ』」はびっくりするくらいベタな趣向だが、文章に癖がなくスラスラ読めるのがいい。素人さんとセミプロさんの投稿作品集では、ストレスなく読めるというのは大変なアドバンテージである。
●今日は時間を確保できたので、美術館に行く。午前中電車に乗って有楽町へ赴き、出光美術館の「宗像大社国宝展」を観る。福岡で育った人間には説明不要だが、宗像は「むなかた」と読む。宗像大社の沖津宮である沖の島で、昭和年間に発掘調査が行われ、出土した数万点が一括して国宝に指定された。という訳で、前半の展示物ほとんどすべてが国宝という、凄まじい展示会であった。
●午後は上野の森美術館の北斎展に行く。これが間違いであった。行くべきではなかった。大変な混雑で、館内の行列がちっとも前に進まない。自分がせっかちなのは自覚しているが、とうとう我慢できなくなった。同じ絵の前にいつまでもぼんやりつっ立ってられるかよ馬鹿馬鹿しい、という気になり、どうにもこうにもじれったくなってさっさと立ち去ってしまった。さあて、展示物の二割も観ただろうか。
今回の入館料千五百円がまったくの死に金かというとそうではない。おかげで、有名どころの展示会には朝イチの開館前に出向いて並ぶべし、という貴重な教訓を得られたのである。
●書店に寄って本を買う。
『ミンコット荘に死す』 L・ブルース 扶桑社ミステリー