累風庵閑日録

本と日常の徒然

『マンアライヴ』 G・K・チェスタトン 論創社

●『マンアライヴ』 G・K・チェスタトン 論創社 読了。

訳文の質の心細さで有名な本である。それを知っていたので最初から、逐語的に文章を味わうような読み方を放棄して、書いてある意味をざっくりとつかみ取るような読み方に努めた。

前半、情景を描写する道具としての言葉はそれなりに機能しているようだ。何が描いてあるのかだいたい分かる。後半、抽象的な意味を伝える道具としての言葉があまり上手く機能していないようだ。何が書いてあるのかよく分からん。全体として、さあて、六~七割くらいは内容を理解できただろうか。いかにもチェスタトン流の、奇天烈で夢幻的なストーリーをぼんやりイメージできたので、まあよしとする。

おそらくこの作品、後半の議論こそが読み所だと思うが、残念ながら私の理解が届かなかった。もしも、プロフェッショナルの技量を持つ翻訳者が手掛けた新訳が出るなら、喜んで買う。チェスタトンは好きな作家なので、ちゃんと味わいたいと思う。