累風庵閑日録

本と日常の徒然

『迷路荘の怪人』 横溝正史 東京文藝社

●『迷路荘の怪人』 横溝正史 東京文藝社 読了。

原型版とくらべて描写が細かくなり、展開が丁寧になっている。真相もこっちの方が、某登場人物の心情がよく表れていて、凄味が増している。真相解明の場面も大幅に書き込みが増え、関係者の行動がずいぶん明確になっている。ただ、これでもまだ語り足りない部分が残り、真相の多くは金田一耕助の推測でしかない。真相が耕助の推測で語られるってのは横溝ミステリにありがちなので、まあそんなもんだろうと思うけどな。犯人探しミステリは、やはりある程度ページ数があった方が面白い。中編化のおかげで完成度が高まっている。

死体と犯行現場の描写に関しては不満点があって、この中編版でも解消されていない。詳細は真相に触れるので、非公開で書く。(以下ばっさり伏字)

●さてこれから、続けざまに長編の『迷路荘の惨劇』に手を出すことにする。初読がいつのことか覚えていないが、確実に二十年以上前である。当然内容は綺麗さっぱり忘れている。中編版からさらに書き込みが増した長編がどのように仕上がっているか、再読が楽しみである。