●『迷路荘の惨劇』 横溝正史 角川文庫 読了。
短編版、中編版、長編版と読み比べをやってよかった。中編版まで残っていた不満点が解消されているし、中編版よりもさらに真相を暗示しにくい状況に仕立てられている。
解決部分の書き込みもきめ細かくなっていているし、洞窟探検の興味も盛り込まれているし、全般的に面白くなって、これぞまさしく改稿の成果である。
ただ、後半の事件の構成はどうもいただけない。私の嫌いな(伏字)である。が、こと横溝作品に関しては評価が甘くなる。金田一耕助が指摘したように、犯人の人間像が反映されたものだと受け止めておく。
●それにしても三作品の併読は、正史が物語を練りながら完成度を高めてゆく過程をまざまざと感じることができて、実に面白い。横溝ファンの皆様におかれましては、ぜひこの遊びを試してごらんになるようお勧めしておく。光文社文庫の『金田一耕助の帰還』、出版芸術社の『迷路荘の怪人』、そして角川文庫の『迷路荘の惨劇』の三冊を揃えればできる遊びである。
ううむ、この比較について、ネタバレ全開で語りたいのだが……
●これで、「光文社文庫の『金田一耕助の帰還』を一年かけて読む」プロジェクトが完結した。改稿比較という遊びは、やっぱり面白い。来年からは、「光文社文庫の『金田一耕助の新冒険』を一年かけて読む」プロジェクトを発足させる。
●今日は水曜なので飲んでいい日である。肴はエイを煮付ける。砂糖、味醂、醤油、生姜で甘辛に。ちっとばかし醤油がきつ過ぎた。まだまだ修行が足りない。他に、昨日から仕込んでおいた里芋の煮ころがし、冷奴、買ってきた大根漬け。冷や酒を飲む。