●『絞首人の一ダース』 D・アリグザンダー 論創社 読了。
いきなり別の話から始めるが、落語の人情咄が嫌いだ。興味がないのではない。じっとりと湿った内容が嫌いなのだ。ついでに書くと、時代小説の市井ものも嫌いだ。よくあるパターンは、過酷な運命に翻弄され虐げられた人々が、それでも精一杯生きようとする日々の暮らしを哀感を込めて描くっちゅうヤツね。
で、この本は捻りとオチで勝負するタイプの短編集である。アッと驚き、そう来たか、と唸る痛快さがないわけではないが、読むのがやたらにしんどかった。乱暴に一言でいうと、捻りのある人情噺なのである。登場人物が不遇で虐げられている設定が多いし、陰惨で救いがない結末も多い。一編読み終わると、少し休息しないと次の話に進めないくらいしんどい。
秀逸作の題名だけ挙げておく。「空気にひそむ何か」、「悪の顔」、「かかし」、「見知らぬ男」、「愛に不可能はない」。このうち一番気に入ったのが「愛に~」である。人情咄的な湿度のないブラックなオチがよろしい。次点は「悪の顔」で、結末前に趣向に気付いてしまったので次点だが、気付かなかったら多分最優秀作。
●次の本は、口直しに少し明るいやつを読みたい。
●今月の総括。
買った本:十三冊
読んだ本:十冊
先日も書いたが、もう一度書く。ネットの発達で私家版の本が簡単に入手できるようになったのは喜ばしいことだが、買う量が増えてしまうのが困りもの。