累風庵閑日録

本と日常の徒然

『最上階の殺人』 A・バークリー 新樹社

●埼玉県蕨市の、川鍋暁斎記念美術館に行ってきた。幕末から明治にかけて活躍した絵師の、曾孫ご本人が開設している施設である。暁斎の多彩で達者な絵の数々を、ゆっくり楽しませてもらった。最も見事だったのが「新版かげづくし 天狗の踊」で、天狗達が踊っている様がすべて黒い影で描かれており、実に活き活きとして躍動感に満ちている。この美術館にはかねてから一度行きたいと思っていたのだ。一度行ったら満足したけど。

●これで思い出した。国書刊行会が一時期、妖怪画の画集をたくさん刊行していたことがあった。出る度にいちいちお付き合い(=購入)していたのだが、その中の一冊に『暁斎妖怪百景』なる本がある。書棚から引っ張り出してぱらぱらやると、これがまたなかなか味わい深い。

●『最上階の殺人』 A・バークリー 新樹社 読了。

これは面白い。いやあ、面白いぞこれは。文句なしの傑作である。手掛かりや容疑者を箇条書きにしながらじっくり推理を組み立てる流れが面白いし、美人秘書に翻弄される探偵のあたふたぶりも面白いし、ぬけぬけと人を喰った結末も面白い。「今年印象に残った十冊」に間違いなく含まれる。

ところでこれで、読もうと思って買っておいた新樹社のミステリをすべて読破した。来年からは晶文社のミステリに取り組むことにする。読書が快調で幸せなことである。

●ビールを飲みたい気分だったので、晩酌はビール。肴はチルドの餃子を焼く。