●『失われた時間』 C・ブッシュ 論創社 読了。
黄金時代の作品とは思えないほどダークな素材を扱った、直球ど真ん中のミステリである。だがそればかりではない。この作品は人間の救済と再生の物語であり、信念と行動の物語であり、決意と誇りの物語なのだ。そしてミステリである以上当然ながら、悪意と狂気の物語でもある。”失われた時間”を巡る謎が解明されるシーンは事件の結末であると同時に、ある物語の完了と再開でもある。これは凄いぞ。読了後に、小説を読んだ満足感を与えてくれる傑作。
ところで、題名を昔の新書トラベルミステリ風にするなら『ハイウェイズ荘七分間の壁』ってな具合か。