アメリカのハードボイルドの流れをくむ私立探偵小説のような味わいである。あるいはネロ・ウルフもののような。題名から、靴が手掛かりになってロジカルな推理が展開されるものとばかり、勝手に想像していた。だが実際はなかなかそうではなく、派手で荒っぽい展開である。主人公のジョシュア・クランクが、実際のところ探偵役なのかどうかもはっきりしない掴み所のない人物だし、そのせいで(伏字)くて、事件全体がどうもすっきりしない。釈然としない読後感である。
訳されたのは嬉しいが、その後翻訳が途絶えていることをさほど残念には思わない。もし今後シリーズの別の作品が出たらお付き合いに買うけど、同じベイリーが訳されるのなら、フォーチュンものの長編の方を読んでみたい。