累風庵閑日録

本と日常の徒然

『少年探偵ロビンの冒険』 F・W・クロフツ 論創社

●『少年探偵ロビンの冒険』 F・W・クロフツ 論創社 読了。

なんと珍しやクロフツジュブナイル。こういう珍品を訳してくれるから、論創社は好きなのだ。

内容はよくある他愛ないジュブナイルではない。主人公こそ子供だが、展開は地味にして堅実、そして着実。鉄道工事現場の詳細な描写とも相まって、いかにもクロフツらしい上出来なミステリである。最後まで読むと分かるが、マーティン警部を主人公に据えて、大人向けのサスペンス小説として書いても成立する構成になっている。これも感心するポイント。

主人公ロビンの描写も面白い。頭がいい人間特有の嫌らしい部分がちゃんと描かれている。一緒に長期休暇を過ごすことになった無二の友人をかすかに蔑んでいる気配があるし、友人の性格を読んで、自分の思い通りに動かすために言葉を弄する狡猾さも持ち合わせている。だがその一方で、自分にはない友人の演技力やはったりをかます勇気に感心する素直さも描かれており、バランスの取れた人物像になっている。

「緊張を感じるシリル・フレンチ」の章で、鉄道会社の関係者が言う「以前うちの会社にいた技師で、ミステリ作家になった者がいてね」、というセリフはクロフツ自身を指したお遊びだろうか。

●とある作業に着手。小説の登場人物をリストアップしてテキストファイルにするだけの簡単なお仕事です。