累風庵閑日録

本と日常の徒然

『吸血蛾』 横溝正史 角川文庫

●書店に寄って本を買う。
『いい加減な遺骸』 C・D・キング 論創社
『淑女怪盗ジェーンの冒険』 E・ウォーレス 論創社

●『吸血蛾』 横溝正史 角川文庫 読了。

戦後の横溝ミステリの中で、ここまで極端にスリラー寄りで荒っぽい作品は、他にあまりないだろう。作品の主題は事件の謎とその解明ではなく、何人もの人間がほいほい殺されてゆく凄惨な事件そのものである。最後に示される解決は、ミステリ小説の形式を整えるための単なる手続きのようなものだし、ほぼ何もしない金田一耕助はもはや主人公ではなく、金田一シリーズの一編であることを示す記号のような存在になっている。

以下、いくつか気になった点を箇条書き。
・死体の脚をアドバルーンに括り付けて飛ばすなんて趣向はいかにも乱歩だが、正史自身はどの程度、乱歩の通俗長編を意識していたのだろうか。
・狼男という極めて分かりやすい怪人キャラクターを出しておきながら、なぜ題名が”蛾”なのか。蛾の趣向なんて途中でどこかに行ってしまうのに。
・最後に明かされる狼男の趣向は、人形佐七シリーズで使われたことがあるような気がするのだが、実例を思い出せない。

●ようやく確定申告の書類作りに着手。面倒臭いので今日は途中まで。