累風庵閑日録

本と日常の徒然

『「X」傑作選』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫

●早朝の電車で東京へ向かう。今日から二泊三日の旅程で、京都に行くのである。東京駅でいったん改札を出、あらためて別の切符で入り直す。JR東海の割引商品「ぷらっとこだま」である。こいつを使うと三千円がとこ安くなるのだ。ただし自宅最寄り駅から東京駅までの運賃は別途必要なので、正味の差額はそれより少なくなるけれども。

●新幹線の中で、少し残っていた『「X」傑作選』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫 を読了。

村瀬継弥の巻末解説「宝物殿」が素晴らしい。この本のどこがどう面白いかは、この解説を読めば十分だろう。言及されている作品について一言書くなら、香山滋「妖虫記」は、日野日出志の漫画のようなグロテスクさが強烈。

それ以外では、双葉十三郎「匂う密室」が、限られたページの中で犯人探しミステリを書こうという情熱が微笑ましいし、ページが少ないことをあえて小ネタに仕立てた趣向が楽しい。個人的には本書中で一番の傑作である女銭外二「朱楓林の没落」は、じわじわと高まってゆく不安感と、戦前の探偵小説によくある(伏せ字)オチを外した結末とで、記憶に残る。

●こだま号なので時間がかかる。東京から四時間弱かけて、昼前に京都に到着。着替えの類が入った鞄をロッカーに預け、いよいよ観光の始まりである。この調子で書いていくと長くなり過ぎるので、これ以降は観たものだけを箇条書きにする。

東福寺で国宝の三門と重文の寺院建築群、そして通天橋から眺める新緑の瑞々しさよ。
泉涌時で大門その他重文の寺院建築。
泉涌寺塔頭戒光寺で重文の丈六釈迦如来像。
同じく塔頭の即成院で重文の阿弥陀如来像および二十五菩薩像。

本当はこの後伏見稲荷にも行こうと思っていたのだが、時間切れならぬ体力切れであきらめる。東福寺から泉涌寺まで歩こうとして道に迷って、坂道だの階段だのを登ったり降りたりしてすっかり疲れてしまった。もうホテルに入ることにする。