●「横溝正史の朝顔金太捕物帳をちゃんと読む」プロジェクト。今回は第五話「消える虚無僧」を読む。商家や旗本屋敷などに現れる謎の虚無僧。出入りできないはずの部屋からいつの間にか姿を消している。という不可能興味のあるオープニングが楽しい。盲目の浪人、稲荷の謎、地下の惨劇、などと道具立てが派手で、割とスケールの大きな話。ちょっとそれは無理じゃないの、と思う個所もあるが、こういう捕物でツッコミをいれるのは野暮だろう。
続いて、出版芸術社の『江戸名所図会』に収録されている改稿版佐七バージョンを読む。題名は「通り魔」と変わり、神出鬼没の怪人は虚無僧から六部へと変更されている。以前読んだはずだが、当然のように内容はすっかり忘れているので、初読も同然。文章がずいぶんシンプルになって、テンポがよくなっている。真相に関わることなので詳細は書かないが、原型版で感じた二、三の不満点が解消されている。つまり、完成度が高まっているのである。
ところで出版芸術社の解説を読むと、原型版と佐七版との間に伝七版があって、光文社文庫の『黒門町伝七捕物帳』に収録されているという。持っているはずだが棚を探してもすぐには見つからない。先に見つかった桃源社の『黒門町伝七捕物百話 第四巻』に収録されているものを読んでみる。
題名は佐七版と同じ「通り魔」で、怪人物はこれも佐七版と同じ六部である。読んでみると内容は佐七版とほとんど同じ。主人公とその子分の名前が違うのみである。
つまり「消える虚無僧」の改稿版は、そもそも伝七シリーズとして書かれたということになる。その後の佐七版はただ名前を変えただけである。これがもし、定本人形佐七捕物帳全集や春陽文庫などに収録されていたら、そのタイミングで改めて佐七版として、さらなる改稿が施されていたかもしれない。と想像を逞しくする。
●今月から新しいジムに移って、今日までに八回行けた。できれば最低でもひと月に十回は行きたいところだが、入会したのが第二週になってからだったし、まあこんなもんか。
●今月の総括。
買った本:七冊
読んだ本:十冊
来月は買う本がだいぶ増えそうだ。