●『双生児の復讐/マイナスの夜光珠』 マッカレー/ビーストン 春陽堂 読了。
昭和五年刊行の、探偵小説全集第十五巻である。マッカレーの「双生児の復讐」は、冒頭二十ページで物語の背景と復讐の動機とが説明され、すぐに双生児の活躍が始まる。内容はスピーディーな怪盗系アクションで、カーチェイスや格闘シーンまである。こんなにアクティブな話だとは思わなかった。この作品を原作に、舞台を現代に焼き直して映画化してもそこそこ面白いものになりそう。
単純に力ずくなだけではなくて、相手の心理を読んで罠にかけるネタや、双生児であることを利用したネタもある。その辺りが怪盗系である。ご都合主義がちょいちょい見受けられるが、B級アクション映画のようなものだと思えば大した問題ではない。予想していたよりかなり面白くて、読んでよかった。でも、この結末には悪い意味で驚いた。なんだこりゃ。
同時収録はビーストン「マイナスの夜光珠」と「シャロンの燈火」の二編。この作家を読むのはたぶん初めて。捻りがあってちょっと面白い。ビーストンは、博文館の探偵小説全集と創土社の傑作集と別冊宝石のビーストン&チェスタトン集が手元にあるから、おいおい読んでいきたい。たくさん読むと飽きるかもしれんが。
●「双生児の復讐」のビックリな結末に関しては、『欧米推理小説翻訳史』 長谷部史親 本の雑誌社 を参照すればその辺の事情が分かる。どうやら(伏字)らしい。戦後の刊行になる児童書ではどういう結末になっているのか、気になるところである。
●せっかくだから、たまたま持っていたTOMOコミックス名作ミステリー『ふたごの復讐』 劇画/叶バンチョウ 主婦の友社 を読んでみた。アレンジはしてあるが、大筋は原作と同じ。最大の違いは、双生児を追う敏腕刑事ミルトン・グリフを、間抜けなやられ役にしてしまったこと。気になる結末は、なるほど、こう処理したか。
