●どうもなんだか、一冊の本に手を出す気がしないので、「横溝正史の『朝顔金太捕物帳』をちゃんと読む」プロジェクトの続きをやる。第七話「狐医者」である。
駕籠に乗っていた医者を暗殺者が襲撃した。医者は衆人環視の中で駕籠に乗り込んだはずなにのに、殺されていたのは狐であった。やがて医者の娘も狐に変じたという噂が飛ぶようになる。という、不可能興味&怪奇ネタ。そこはまあ捕物帳だから、真相は他愛ないけれど。オープニングは魅力的だが、真相解明部分がぐだぐだ。また、ある病気を題材にしているので、現代では極めてデリケートな扱いを要する。
改稿版は、人形佐七の「狐の宗丹」である。春陽文庫の第十二巻『梅若水揚帳』に収録されている。前半は同じだが、後半はかなり改変されて別の話になっている。医者の駕籠が襲撃されるくだりは、佐七版の方が設定が練られていて、状況が複雑になっている。犯人設定も佐七版の方がミステリ的興味が増して、面白くなっている。だが、医者が狐に変じた件の真相が判明するシーンは、金太版に軍配を上げたい。ちゃんと現場に出向いて状況を観察したうえで推理をしているので。
●ブックオフを覗く。布教用に、角川横溝の非金田一ものを六冊買う。この店はちょいちょい角川横溝を補充してくれるので、定期的に覗くことにしている。
