累風庵閑日録

本と日常の徒然

『靴に棲む老婆』 E・クイーン 創元推理文庫

●『靴に棲む老婆』 E・クイーン 創元推理文庫 読了。

久しぶりにクイーンの長編をしっかり読んで満足。狂的な一族の屋敷で起こるマザーグースがらみの事件は、装飾たっぷりで面白い。ピストルを撃った人間は分かっているが犯人は分からないだとか、狂気の雰囲気で隠蔽できるものは正気であるだとか、ミステリらしい記述が嬉しい。

だが今回の探偵クイーンは、最終的に事件を解決するとはいえ、ちとうっかりさんに見える。手掛かりの出し方も少々心細い。そして一番驚いたのは事件の真相ではなく、(伏字)がもともと(伏字)だったという設定である。

この作品は今を去ること三十年以上前に、子供向けの本で読んだことがある。大人向けの訳で読むのは今回が初めて。内容はすっかり忘れているので、初読も同然である。ふと好奇心で、あかね書房の『エジプト十字架の秘密』に収録されている、かつて読んだ「十四のピストルのなぞ」をぱらぱらと覗いてみた。すると、登場人物の設定や解決場面の舞台やなんか、ちょいちょい改変されているではないか。それに、クイーンが真犯人の名前を指摘してから、なんとたったの二ページで物語が終わっている。大胆なアレンジである。

●今まで使っていた旧メールアドレスで、送受信ができなくなった。何も連絡は来ないが、プロバイダに申し込んでいた解約処理が先月末で完了したのだろう。これでようやく、煩わしいスパムメールから解放される。やれやれ。

●今月刊行される……はずの『横溝正史研究6』だが、戎光祥出版のサイトでまだ具体的な情報が出ていない。刊行予定日は十日だというのに、大丈夫だろうか。