●『少年少女王冠』に連載された、横溝正史の「深夜の魔術師」を読む。戦後版である。連載が三回しか続いておらず、柚木邸の舞踏会で三人の金蝙蝠が現れたところまでで物語が途絶えている。
まず探偵役は由利先生と三津木俊助のコンビ。古館少年が登場する予定だったかどうか不明だが、ジュブナイルだからたぶん出るだろう。もしかして代わりに御子柴少年になっていたかもしれないけど。
富豪の設定と怪人が狙う対象は、柚木元子爵が持つ「宇宙の王冠」になっている。さすがに新発明の兵器では時代に合わないのだろう。
文章は戦前版と「真珠塔」との間をつなぐミッシングリンクで、戦前版になくて「真珠塔」にある記述も、逆に戦前版にあって「真珠塔」にはない記述も、それぞれ確認できる。
雑誌連載時期は昭和二十五年で、「夜光怪人」が完結するタイミングとほぼ重なるように連載が始まっている。ということはもし完成していれば、由利先生が出馬した最後の事件になった可能性があるわけだ。