●『ナポレオンの剃刀の冒険』 E・クイーン 論創社 読了。
丁寧に伏線を散りばめ丁寧にそれらを回収するタイプの犯人当てミステリは、実に楽しい。解決部分で、手掛かりがここにもあるそこにもある、と次々示されてゆくのを読むのは、ひとつの喜びである。
「呪われた洞窟の冒険」と「殺された蛾の冒険」の二作が特に面白かった。前者は幽霊による殺人という不可能犯罪と、情景が一目で分かるシンプルな真相が好みだし、後者はたったあれだけの状況から真相を導く手際が素晴らしい。巻末の解説もお見事。伏線をいちいち取り上げて論じ、トリックの解説をし、きっちりと「読み方」を示してくれる。
この本を読んで、クイーンのシナリオをもっと読みたくなった。近いうちに続巻の『死せる案山子の冒険』を読むのはもちろんだが、他にも翻訳されている作品がある。ここで巻末のエピソードリストの、翻訳情報が大変役に立つ。とりあえず翻訳作品をエクセルに整理だけはしておいて、何かのタイミングでえいやっと、図書館に複写依頼を出そうと思う。