●「横溝正史の朝顔金太捕物帳をちゃんと読む」プロジェクト。今回は第九話「猫と奥女中」を読む。手に取ったのは、草人社の『朝顔金太捕物帖』である。
雷に打たれた男の死体と殺された猫の死体、その側に高価な女帯が落ちていた、という発端。ある大名の姫が度を越した猫好きで、同じく猫好きの奥女中とともに数十匹の猫の世話に夢中。その奥女中の失踪事件と、贋金事件とがからむ。
改稿版佐七バージョンは「猫姫様」と改題され、春陽文庫の全集第二巻『遠眼鏡の殿様』に収録されている。基本的には同じ事件だが、再構成されてスケールがちょっと大きくなっている。金太版では単なる情報提供者だった人物が、事件の鍵を握る重要人物に昇格している。奥女中藤波の最後の行動に対する動機付けが強化されている。関係者の後日譚が、ちょっと異なる。
さてお次は、佐七版のバージョン違いの確認である。同光社の『新作捕物選 横溝正史篇 人形佐七捕物文庫』に収録されている「猫姫様」をざっと流し読みする。逐語的に確認してはいないが、概ね春陽文庫版と同じ。藤波の弟の名前が、金太版と同じ千代松のままである。春陽文庫版では松太郎に変更されているのだが。
「猫姫様」は『定本人形佐七捕物帳全集』の第一巻にも収録されているが、こっちはたぶん春陽文庫版と同じだろうと思うと面倒臭くなって、確認は省略。