累風庵閑日録

本と日常の徒然

『赤き死の香り』 J・ラティマー 論創社

●『赤き死の香り』 J・ラティマー 論創社 読了。

 なかなかの秀作。展開はハードボイルド系ミステリの型通りで、ウイスキーと美女、ナイトクラブとギャング、カーチェイスと銃撃戦、といったもの。主人公のキャラクターがだらしなくて面白く、女性の同僚との会話が面白く、おかげで読み味は軽快。さくさくページが進む。

 だが結末に至って意外な犯人と意外な動機が指摘され、さりげない情景描写やちょっとした会話が実は重要な伏線であったことが明らかになる。(伏字)という真相がちと残念だったが、それは私の好みの問題で、質の問題ではない。それどころか読了後しばらく考えているうちに、こういう真相そのものが伏線の一部を構成していることが分かって、秀逸な結末に思えてきた。

 今回ラティマーを初めて読んで、気に入った。もっと読みたいけれど、手持ちはポケミスの『第五の墓』だけである。『モルグの女』や『処刑6日前』を探すべきか。もう何年も前に古本からすっかり足を洗ってから、こうやってちょっと興味を持った本であっても、古本屋を探し回ろうという意欲がちっとも湧いてこないのだが。

●今日は飲んでいい日である。肴は、ジャンクなものを喰いたい気分だったので、魚肉ハンバーグを買ってきた。薄切りにして胡椒を効かせて弱火でじっくりと炒め、下茹でしておいたブツ切りの隠元と合わせる。アルコールはビール。あらかじめ凍らせておいた陶製ジョッキに注いで、ぐびぐび飲む。