累風庵閑日録

本と日常の徒然

『島久平傑作選』 河出文庫

●『島久平傑作選』 河出文庫 読了。

 一冊通読してみて、島久平の人情味の勝った作風はあまり好みでないと分かった。だがその点は重要ではない。重要なのは、そもそも島久平を読める、という点である。それまで読むのが著しく困難だった作家を、手軽な文庫で読めるようにしたというのが、本格ミステリコレクションの大きな意義である。

 前半に収録されている、あまりにも短い分量で犯人探しミステリをやろうとしている作品はどうもあっけない。その中で割と秀逸なのは、筋道立てて犯人を指摘する「村の殺人事件」と、アリバイトリックの基本思想が面白い「白い野獣」である。他に、オチで勝負するタイプの「凶器」や、横溝正史の戦前短編を思わせる「椿姫」、動機が奇怪な「犯罪の握手」も面白かった。犯罪隠匿の手段が面白く、きっちり伏線も張ってある「鋏」が最も秀逸。

 後半の中編では、「悪魔の手」が面白かった。長閑なサスペンス・メロドラマ。真相がいかにも昔の探偵小説めいて、これはこれで楽しい。

●体重と体脂肪率とをグラフ化し始めてから二カ月。体重は二キロ少々減った。最近油断して飲み食いの量が増えていたから、減量のペースが落ちてしまった。