●朝六時過ぎに帰宅。倒れるように寝る。半日使い物にならず。
●夕方になって、昨日読み残していた「髑髏検校」を読み終える。
正史の器用さが分かる佳品。『吸血鬼ドラキュラ』の、特に序盤から中盤の展開をすっかり江戸の街に置き換えて活き活きと筆を進めている。ドラキュラ伯爵の眷属、無名の女吸血鬼に相当する妖しのお女中に、松虫、鈴虫と名付けるセンスよ。そして、夜歩きする姫を追跡するために、その着物に縫い付けた糸と糸車という小道具を持ち出すセンスよ。
正史が最終的に『吸血鬼ドラキュラ』を最後まで読んだかどうかは分からない。後半は、原本に対応する者が見当たらない独自の人物も出てくるなど、正史が発想の翼を自由に羽ばたかせ始めたことがうかがえる。これも独自の人物、吸血鬼に付き従う悪女のお角なんてのは、もしかして「牡丹燈籠」や「四谷怪談」といった古典文芸の影響があるのだろうか。結末がなんともあっけないのは、連載していた雑誌が途中で潰れたためだそうで。もしも雑誌が継続していれば、当初の想定通り二年ほどかけて大伝奇長編として完成されたのかもしれないと思うと、まことに惜しい。
ここで、原作と本作品とで登場人物の対応を記しておく。両者の展開が完全に一致するわけではないから、それぞれの人物が果たす役割も多少異なっているが、大体の立ち位置で判断した。
ジョナサン・ハーカー ⇒ 鬼頭朱之助
ミナ・ハーカー ⇒ 琴絵
ルーシー・ウェステンラ ⇒ 陽炎姫
アーサー・ホルムウッド ⇒ 秋月数馬
キンシー・モリス ⇒ 対応する人物なし、あるいはセワードと二人分を縫之助に担わせたか
ジャック・セワード ⇒ 鳥居縫之助、あるいはモリスの役割も同時に担っているか
レンフィールド ⇒ 鳥居大膳
ヴァン・ヘルシング ⇒ 鳥居蘭渓
ドラキュラ伯爵 ⇒ 不知火検校