累風庵閑日録

本と日常の徒然

「髑髏検校」ダイジェスト版

●またもや「髑髏検校」を読む。昨日読んだのは文庫版で、今日読んだのは同光社『不知火奉行』に収録されているダイジェスト版である。そもそも一連の「髑髏検校」へのアプローチは、ダイジェスト版の内容を確認するのが主たる目的だったのだ。

 会話も描写も大幅に簡略化されているが、展開は文庫版と同じ。要するに、文字通りダイジェストである。……と思って読み進めていたのだが、なんと終盤の内容が変わっているではないか。これにはちと驚いた。

 多くの犠牲者が吸血鬼と変じて江戸の街にはびこり、危機的状況になっている。文庫版でほとんど意味がなかった役者富五郎のエピソードがちょっとだけ活用されている。序盤の房総の話が終盤で関係してくる。吸血鬼が忌避するのが大蒜ではなくて白檀の香になっている。検校が滅ぼされるシーンが全然違う。描写がそっけなくて物足らないし、結末が駆け足であっけないのは文庫版と同じだけれども、ストーリー構成としてはこのダイジェスト版の方が優れていると思う。

 ちなみに同じ物が雑誌『小説倶楽部』の昭和二十八年十月号にも掲載されており、そこに「どくろ検校について」という正史自身のコメントが付されている。その一部を引用すると、「終わりの方はいくらか原作とかえておいたことを附け加えておく」とのことである。