●今回の北海道横溝文献探索行は、実に楽しく有意義な旅行であった。一日かけて北海道に移動し、丸一日図書館にこもり、一日かけて戻るという旅程がちと酔狂だったけど。
さて落ち着いて、手持ちの資料を踏まえながらその成果を考えると、個人的には不知火甚左の「笛を吹く浪人」が重要な収穫である。手持ちのコピーにはページ欠けがあって、不完全な状態なのだ。その欠落部分を補うことができそうである。素晴らしい。
●『招かれざる客』 C・オズボーン 講談社文庫 読了。
クリスティーの同題戯曲の小説化である。二百ページしかなく、さっと読める佳作。実際は、間に旅行を挟んだので五日もかかったけど。特に尖がった部分がないオーソドックスなサスペンスで、何も引っかかることなくすいすい読める。展開が遅滞しないのは、娯楽小説にとっては大きなアドバンテージである。原作は以前読んだことがあるが、ちっとも覚えていない。そのおかげで素直に楽しめた。
最後のシーンがやけに唐突で甘っちょろい。読了後に原作を引っ張り出して確認してみると、この部分はせりふが多少改変されているようだ。大筋に変わりはないが、原作の方が好みである。
ところで巻末解説には、同じく小説化された『蜘蛛の巣』も講談社文庫で出る予定と書いてあった。……実現しなかったか。