累風庵閑日録

本と日常の徒然

藤沢の遊行寺

●このところ、嫌なプレッシャーのかかる案件が続いていた。時間的にはさほど忙しくないけれども、いろいろあって体の内奥から何かが溢れ出そうになっていた。その案件がようやく収束したので、この際えいやっと休みをとってやった。

 ただ休むだけではなく、泊りがけでどこかに出かけようと思う。束の間の非日常を味わって気持ちを切り替えて、英気を養わないといけない。とはいうものの、温泉旅館に行くような予算はない。次善の策として、どこかそこら辺のビジネスホテルに泊まることにする。それだって十分非日常である。

●そこで思いついたのが、神奈川県の藤沢である。現在、藤沢の遊行寺で国宝の「一遍聖絵」全十二巻が展示されているのだ。その見学をメインイベントにして、ついでに鎌倉にも足を延ばそうと思う。鎌倉国宝館でも、「国宝鶴岡八幡宮古神宝」という企画展が開催されている。鎌倉だの藤沢だのってのは日帰りできる場所だが、そこをあえて泊まるのが非日常。

 そう決めたのが先週末である。先日読んだ『列島の歴史を語る』を手に取ったのは、そもそも第五章『時宗と「一遍聖絵」』を読むのが主な目的だったのだ。現物を観る前に、少しでも鑑賞の手掛かりを得ておきたいと思って。

●早朝、通勤ラッシュが始まる前に行動を開始する。非日常だから、普段は決して使わないグリーン車に乗ることにする。鎌倉に到着し、駅から徒歩五分のカフェでモーニング。やがて国宝館の開館時刻になったので、そちらへ向かう。この施設の通常展示品である「薬師三尊及び十二神将立像」は、何度観てもカッチョイイ。今回の展示のひとつ、歓喜天像の実物はたぶん初めて観る。異様な姿である。

●天気がよければもっとゆったり散歩でもしたのだが、雨ではうろうろする気も失せる。予定より一時間早く鎌倉駅に戻り、江ノ電で藤沢へ。バスで遊行寺へ移動し、宝物館に入る。なにしろ平日の昼間だから、他の入館者が爺様婆様ばかりなのは当然だが、びっくりするくらい大勢でなかなかの混雑である。

 国宝の絵巻「一遍聖絵」は群衆が微細鮮明に描かれており、その髪型、被り物、着物の種類と柄、持ち物、などバラエティに富んでいて面白い。踊り念仏の踊っている姿など、躍動感のある姿態が描かれている。これは観てよかった。

藤沢駅前に戻って昼飯。リサイクル系を含めて古本屋を四カ所回るが、何も買う物はなし。いい加減時間をつぶして、早めにホテルにチェックインする。昼寝してから少し本を読む。

●あらかじめネットで調べて、駅前にいい感じの立ち飲み屋があることをチェックしておいたのだが、こんな雨ではうろうろする気も失せる。たまたますぐ近くにスーパーがあったので、お総菜とアルコールを買ってホテルで晩飯。