累風庵閑日録

本と日常の徒然

『仮面舞踏会』 横溝正史 角川文庫

●いろいろあって二週間行けなかったジムに、久しぶりに行く。筋トレとストレッチと有酸素運動。明日はたぶん、久しぶりの筋肉痛である。

●『仮面舞踏会』 横溝正史 角川文庫 読了。

 前半は雑誌連載の内容をベースにしており、捜査の進展に伴って手掛かりや断片的な事実が一つ一つ見つかってゆく堅実なミステリである。鍵、蛾、蝋燭、マッチ棒といった小道具や、雨戸の取り付けといった一見些細な事実から、じわじわと事件の様相が明らかになる。だが後半、新規に書かれた部分が始まると、人間ドラマに重点が移るようだ。登場人物それぞれの、現在と過去の想いが丁寧に描かれる。

 真相の解明が(伏字)に大きく依存しているのが少々不満。探偵の推理に関係ない部分が解決の鍵を握っている。結末で金田一耕助が滔々と語る真相には推測が多分に含まれており、彼の役割は証拠に基づいた推理で事件を解明する名探偵というよりは、物語にとにかく結末をもたらすデウス・エクス・マキナのようである。……いや、テキトーなこと書いてますが。

 ところで、樋口操夫人にはぜひ、助演女優賞を差し上げたい。抱え込んだ闇にがんじがらめになって、たまたま捕らえた弱者を執拗に脅かし、同時に自らの内面をも蝕み、ついには……という哀れな人物である。