累風庵閑日録

本と日常の徒然

「三つ首塔」の異同

●午前中は野暮用。状況が変わって、今まで朝五時半に家を出ていたのが、今回から八時半出発でよくなった。これはかなり楽である。

●お願いしていた私家版の本が届いた。
『緑の自動車』 ワイスル 湘南探偵倶楽部

●文庫版と比較するために、東京文藝社の『三つ首塔』をざっと流し読みする。パラパラとページをめくっただけだから、見落としは多々あるはずだけど、目に付いた異同箇所をいくつかここに書いておく。

・文庫版と比較すると、ひとつの段落が短かくて改行がやけに多い。

・登場人物の名前が違っている。
(文庫)上杉誠也 ⇔ (単行本)上杉欣吾
(文庫)高頭五郎 ⇔ (単行本)高頭啓介

・いちいち例を挙げないけれど、文庫版で省略された文章が単行本には散見される。時間経過やシチュエーションの細かな違いもあちこちにある。そして単行本の方が、確かに会話が冗長である。
「あなた。」
「うん。」
で二行使っている個所が、やたらにあるし。

 ……ってな作業を全体の七割くらいまで進めて、いい加減で飽きてしまった。なにしろ短編を長編化するような大幅な改変ではないのだ。ほぼ同じ文章を二冊続けて、些末な変更点に気を配りながらたどっていくのは、疲れるし面白味がない。もうやめる。

 最後に、結末部分は文庫版の方が長いという指摘を実際に確認して、終わりとする。確かに、単行本のこの書き方では吃驚するほど駆け足で、説明不足も甚だしい。大事な要素の説明がいくつか、ものの見事にかっ飛ばされている。

 結論として、冗長な部分を刈り込んで、結末が大幅に改善された文庫版の方が、明らかに完成度が高まっている。