累風庵閑日録

本と日常の徒然

角兵衛獅子

●金太シリーズ「雪の夜話」を佐七版に改稿した、「角兵衛獅子」を読む。春陽文庫の第四巻『好色いもり酒』に収録されている。結論として、内容は金太版とほぼ同一である。主人公の名前を入れ替えただけに近い。少ない違いの一つが、いつものように佐七一家のホームコメディが少々追加されている点。その他追加された内容は、佐七が手掛かりの意味に気付くシークエンス、(伏字)が大罪であることを示す逸話、七兵衛のキャラクターの補足、という程度である。

 松原半次郎に相当する松原錦之助は、事件の記録者ではなくて単なる登場人物になっている。これは佐七の基本設定からして、当然の変更といえる。金太版では猫吉がほとんど活躍していないが、佐七版でも辰と豆六はほとんど活躍しない。構成上の違いは、金太版では盗難事件と遊び人の失踪事件とが最初は無関係に表面化していたのを、佐七版では盗難事件について調べているうちに失踪事件が明らかになるように変更され、エピソードの一体化が強化されている。

 続いて、佐七版のバージョン違いを確認するため、講談社の昭和四十年刊『蛇使い浪人』を紐解く。結論は、ざっと眺めた限りでは春陽文庫版と同じ。

 話はこれで終わらない。「角兵衛獅子」はこの後さらに改稿され、知恵若捕物帳の第三話「幽霊兄弟」になるのである。こいつもついでに読んでみる。冒頭と結末部分で書かれる、角兵衛獅子兄弟の幽霊にまつわる顛末は、「角兵衛獅子」と同じ。間に挟まるメインの事件は全くの別物である。ジュブナイルだから、「角兵衛獅子」のような事件は書けなかったのだろう。推理や捻りはほとんどなく、子分のゝ丸(ちょんまる)の探索であっけなく真相が判明する。

●北海道立図書館に資料の複写依頼を出してから、もう三週間になる。とうとう我慢できずに、問い合わせをしてしまった。結果は、ただいまコピーが大変混みあっていて、順番に作業するので月末くらいまで待って欲しいとのこと。なるほど了解。受け付けられていたことは確認できたし、こうやって状況が分かればひとまず満足である。コピー作業が済んだら枚数に応じた請求書が送られてきて、前払いの確認ができてからようやく資料が発送される段取りになっている。ということは、入手は早くても来月第二週になりそうだ。

●横溝関連の、とある作業を自主的に始めた。もう少し目鼻が付いたら、関係方面に展開する。