累風庵閑日録

本と日常の徒然

『アフリカの百万長者』 G・アレン 論創社

●『アフリカの百万長者』 G・アレン 論創社 読了。

 天才的詐欺師クレイ大佐が、アフリカで成功した百万長者を騙す連作長編。同じ被害者を何度も繰り返し騙すという展開を、全十二回の連載でやってのける。どうやってマンネリにならず、説得力を維持して連載を続けるかがひとつの読みどころ。クレイ大佐の騙しの手管がバラエティに富んで面白い。たまに大佐が登場しない回があって、読者に肩透かしをくわせるのも感心する。被害が重なると当然相手は警戒を強めるので、(伏字)という手段に持っていくのもなるほどと思う。

 被害者側の造形のおかげで、クレイ大佐が成功する度に痛快な気分になる。なにしろ被害者の百万長者は金に貪欲な俗物で、しかも女にだらしない助平。今まで欲しい物は金に飽かせて全て手に入れてきたから、何かが欲しくなると気持ちを抑えられなくなって、そこを詐欺師につけこまれる。物語の語り手で被害者の秘書は、利に敏く小狡い小人ときたもんだ。こういった人物像も読みどころのひとつである。

 ところで本書は、論創海外ミステリの第百巻である。ようやくここまで読み進めた。やれやれ。だが、一息つくのはまだ早い。このペースだと、新刊に追いつくのにあと二年以上かかるのである。いやはや。