累風庵閑日録

本と日常の徒然

『闇のささやき』 N・ブレイク ポケミス

●『闇のささやき』 N・ブレイク ポケミス 読了。

 まさかのポリティカル・スリラー。謎と推理の物語ではなく、ストーリーの起伏を楽しむ作品である。話を転がすためにやたらと偶然の要素が出てくる。住処にも、出会いにも、目撃にも、隠れ家にも、偶然が関わっている。けっ、いくらなんでもそんな偶然……と思ってしまっては、せっかくの本を楽しめない。そういうのをすべて受け入れることにしてページをめくると、それなりに面白く読める。

 主人公はナイジェル・ストレンジウェイズだけれども、もう一方の主人公格として、三人の少年達がいる。彼らの冒険が活き活きと描かれており、ジュブナイル・ミステリを読んでいるような気分になる。

 ところで、ブレイクが本名で書いたジュブナイルオタバリの少年探偵たち』はその昔実家にあって、たぶん読んだはずである。だが、例によって内容はまったく覚えていない。本書の少年達の活躍に通じる味わいがあるのだろうか。いつか再読してみたい。