累風庵閑日録

本と日常の徒然

『死体は沈黙しない』 C・エアード ハヤカワ文庫

●雪!!!!

●『死体は沈黙しない』 C・エアード ハヤカワ文庫 読了。

 警官が主人公の現代英国ミステリを読むのは久しぶりである。もうそれだけで、新鮮さがあって面白く感じる。原書刊行は三十年以上前だから昔の作品なのは間違いないが、いつも読んでいるクラシックミステリに比べたら、七十年代末は現代と言っていい。章の終わりにちょいちょい次へつながる「引き」が書かれており、おかげでページがはかどる。

 事件の真相も犯人の動機も、主人公の奥さんの出産がサブエピソードとして語られるのも、現代的な味わいである。隠された裏の枠組みが突然見えてくる終盤は型通りの面白さだが、その展開は文字通り「突然」で、ロジカルな積み重ねに乏しいのがちと残念。

 読み終えての結論は、決してつまらなくはないが、これといって際立った特徴のない普通の作品。すでにシリーズ三冊目の『聖女は死んだ』を買ってあるからいずれ読むけれども、もし文庫刊行当時リアルタイムに読んでいたら、三冊目には手を出さなかったかもしれない。