累風庵閑日録

本と日常の徒然

『不知火奉行』 横溝正史 同光社

●ようやく確定申告に取り掛かる。必要書類を手元に揃え、いざ入力を始めるも、あまりの面倒臭さに途中で気力が尽きた。明日も続きをやる。

●『不知火奉行』 横溝正史 同光社 読了。

 去年の九月に、収録されているダイジェスト版「どくろ検校」を読んだ。他の収録作は表題作を含めすべて再読になるが、せっかく一度手に取った本だし、通読してみた。

「不知火奉行」
 あっぱれ明朗娯楽時代劇。しかもミステリの趣向もあって、なかなかの快作である。主人公の筑紫源三郎と、親友で与力の若江平馬との関係が楽しい。相手が怪盗不知火だと薄々気付いていながら決め手を持たない与力と、相手が気付いていることを気付いている源三郎とが、何かというと高らかに笑いあう。その一触即発の和気藹々ぶりがひとつの読みどころ。

 ところで、もしやと思って確認した、由利先生もの「夜光中」にはちょいと驚いた。冒頭の、両国川開きの夜のシーンが時代設定を改めて「不知火奉行」に流用されているのだが、ここまであからさまに同じだとは思わなかった。

「名槍まんじ暦」
 まっこと消閑に好適の、さっと読んでさっと忘れればいい作品。分かりやすい登場人物達が、やけに複雑な人間関係を結んでいる。分かりやすい敵役が横行し、分かりやすい場面が続いた果てに、まさかの強引な結末がすべてを終わらせる。

「河童武士道」
 嫌な話。嫉妬と浅慮と、いずれにしろ関係者の器の小ささが悲劇をもたらす。そして、じわりと不気味な話でもある。少し方向性を変えれば、魔性の物が祟る物語になりそう。それも妖怪が登場して立ち回りを演ずるような陽性の展開ではなく、人間がゆっくり理性を失ってゆく湿っぽい展開になる。