累風庵閑日録

本と日常の徒然

コオナン・ドイル集

●京都旅行のお供に春陽堂の探偵小説全集第九巻『運命の塔/ドラモンド』を持って行き、今日まででひとまず前半の、コオナン・ドイル集を読んだ。中編短編合わせて四編収録されている。

「運命の塔」
創元推理文庫版の訳題は「クルンバーの謎」である。東洋の神秘を題材にした、特に捻りのない平坦な物語。内容を一言で表すなら、自業自得、である。背景事情が分かると、醜悪な行いの報いを受ける登場人物に対して、ざまあみろという気になって面白くなる。だがそれは終盤になってからで、途中まではちと退屈であった。

「五十年後」
わずか三十ページで描く大河ドラマ。そして信念のドラマ。こういうのには弱い。泣きそうになる。集中一番の秀作。

 他に「椈屋敷事件」と「グロリア・スコット號事件」のホームズ譚が収録されているが、特にコメントはなし。後半のサッパア集は、日を改めて読むことにする。