●読書会の課題図書、角川文庫の人形佐七を読んでいる。気付いた点に付箋を挟みながらの作業である。先日(3/25)の日記に書いたバージョン違い調査は、残念ながら時間が足りず、ちゃんと手を付けることができなかった。だが旧テキストをごく簡単にざっと眺めただけでも、いくつか興味深い点が見つかった。いや興味深いというのは、まあ物は言い様で、だからどうしたという点ばかりなのだが。
「羽子板娘」
・初登場時の佐七の年齢は二十七、八(文庫では二十一、二)
・母親の名はお由(文庫ではお仙)
「開かずの間」
・辰の初登場という記述はなく、すでに佐七との二人暮らし(文庫では辰は船頭)
・佐七が丸薬の調査を依頼した医師は瓢庵先生。水谷準の捕物主人公である(文庫では良庵)
「嘆きの遊女」
・お粂が姐さん女房という記述はない(文庫では佐七より一つ年上)
「蛍屋敷」
・お町は姉の隣室に寝ていた(文庫では遠くの女中部屋に寝ていた。ここでお俊の心情が描かれる)
・犯人しか知らない事柄が断定で書かれている(文庫では佐七の解釈として書かれている)
・文庫では、犯人の人物像や過去の行状に関する描写が追加されている
・文庫では、最後に佐七ファミリーの紹介が追加されている
この「蛍屋敷」は事件の内容そのものに改変が施され、完成度が増しているようだ。
今日読めたのは以上四編。明日と、読書会当日の午前中とまでかければ十分読了できるだろう。