累風庵閑日録

本と日常の徒然

課題図書の続き

●課題図書人形佐七捕物帳の続き。

「お玉が池」
ざっと見た限りでは旧テキストとの違いは見つからなかった。

「舟幽霊」
この作品が本書の個人的メインである。原型の黒門町伝七版を読むのが、ひとつの宿題になっている。ついでに、佐七版旧テキストである金鈴社版とも読み比べてみる。

 結論として、伝七版と佐七版とは同じ作品と言っていい。事件の真相や展開ばかりか、ほぼすべての文章が同じである。わずかな違いは、主人公その他数人の名前と、いくつか補足的な文章が追加されている点。当然、伝七の子分獅子鼻の竹の台詞は、辰と豆六とに適宜割り振られている。

 主人公以外の人名の違いは
・大黒屋惣兵衛 ⇒ 大桝屋嘉兵衛
・山吹屋の船頭新助 ⇒ 巳之助

 文章については、同じ佐七でも金鈴社版と角川文庫版とで違っている点が興味深い。豆名月と芋名月のコメントや、かんざしにまつわる証言の補強などは、金鈴社版には見られない。つまり伝七版から最終バージョンまでには、最低でも二段階の改稿を経ているということである。

 伝七の子分獅子鼻の竹に、きんちゃくの辰と同じく雷嫌いという属性が与えられている点が面白い。どちらが元なのだろうか。