累風庵閑日録

本と日常の徒然

いろは政談

●午前中は野暮用。

●午後から「横溝正史の『鷺十郎捕物帳』をちゃんと読む」プロジェクトに取り組む。今回は第四話「いろは政談」である。

 「いろは七人組」という無頼侍の集団は、乱暴狼藉を常として江戸の街で悪名高い。そのメンバーが次々に殺されていく派手な事件に、死体消失の不可能ネタもからむ。犯人の企みの多重構造がちょっと面白いのだが、詰め込んだ趣向の割にはページが足りず、とんと粗筋を読んでいるよう。鷺十郎がほとんど活躍しないのは相変わらず。

 続いて佐七版を読む。題名が変わって、「いろは巷談」となっている。春陽文庫未収録作品で、出版芸術社の『幽霊山伏』に収録されている。真相が判明するまでの展開は鷺十郎版と同じ。違いはわずかで、お粂とのやりとりなど、いくつかの文章が追加されている程度である。大きな違いは、真相判明後に事件の背景に関する記述がかなり追加されている点。そのおかげで、いかにも無理のある設定がひとつ、解消されている。同時にこの追加のために、事件の陰惨さが増している。

 さて続いて、佐七版のバージョン違いを確認する。昭和三十年、八こう社から出た『人形佐七捕物文庫 第五巻 金色の爪』に収録されたテキストには、上記の追加がなかった。題名も「いろは政談」のままである。昭和四十三年刊行の金鈴社『女難剣難』に収録されたテキストには追加がある。

●夕方また出かける。今晩は少人数で、ちょいと外で飲む。