累風庵閑日録

本と日常の徒然

「船幽霊」の初出

●読み始めた山田風太郎に、ちっとも気分が乗ってこない。先日の『殺意が芽生えるとき』がしんどかったので、どうやら頭が読書疲れをしているようだ。百ページ読んで中断。

●何気なく横溝正史関連のデータを眺めていたら、人形佐七の「舟幽霊」に関する記述に出くわした。この作品の初出は『別冊宝石40号 江戸好色捕物帳』だが、テキストが現行版とちょっと違うという。そういえば思い出した。だからこそこの雑誌を買ったのだった。自分で買っておきながら、詳細未確認のままで放置して今まで忘れていたのはもったいない。早速内容を確認してみる。

 角川文庫版との最大の違いは、豆六が登場しない点。獅子鼻の竹がきんちゃくの辰にそのまま置き換えられている。金鈴社版で見られた異同は、このテキストにはない。要するに、伝七版から主人公と子分の名前を入れ替えただけなのである。以前(4/15)の日記には、伝七版から佐七最終バージョンまで最低でも二段階の改稿を経ていると書いたが、実際は最低でも三段階の改稿であることが分かった。