累風庵閑日録

本と日常の徒然

『終わりのない事件』 L・A・G・ストロング 論創社

●早朝の電車で出かける。渋谷から東急に乗り、二子玉川へ。五島美術館で、「春の優品展」と題する展示会を観るのだ。目玉は国宝の源氏物語絵巻である。

 で、実際に観た感想は、ふうん……

 絵具の剥落があって全体的に色がくすみ、正直なところあまり有難味が感じられなかった。そもそも源氏物語をよく知らないし、これでは豚に真珠の感がある。せっかくの国宝に申し訳ないことである。主たる展示品が和歌に関する書だってえのも、テンションが上がらない一因。分からん。書は分からん。申し訳ないことである。

二子玉川駅からほど近く、静嘉堂文庫美術館でもちょっと面白そうな展示をやっている。あわよくばそっちもハシゴを、と思っていたがパスすることにした。五島美術館まで往復三十分歩き、無駄に早く着きすぎて開館前に三十分ぼんやり待ち、見学に一時間。それですっかり疲れてしまった。おまけに天気予報では午後から雨である。雨中に外出なんてしたくない。降り出す前に帰りたい。という訳でさっさと帰宅。

●昼寝してから本を読む。
『終わりのない事件』 L・A・G・ストロング 論創社 読了。

 事件が起きてさて犯人は誰か?という小説ではない。今何が起きているのかを探るタイプの小説である。そして中盤まで読むと、実は(伏字)小説だったことが分かる。さらに最後まで読むと、結局(伏字)が主眼の小説だったことが見えてくる。主人公エリスのキャラクターと、相棒ブラッドストリートとの掛け合いの様子が、物語の流れそのものを味わうこの作品の魅力に大きく貢献している。読んでいる間常に面白さが維持されている、なかなかの秀作。手に取った時は読了までに三日かかるかと思っていたが、面白くてページがはかどり、二日で読めてしまった。