累風庵閑日録

本と日常の徒然

『歌うナイチンゲールの秘密』 C・キーン 論創社

●『歌うナイチンゲールの秘密』 C・キーン 論創社 読了。

 ストーリーの展開で読ませるタイプの小説。ジュブナイルだからということもあるだろうが、全体の構成はかなりゆるい。頻発する掏摸事件と、革命から逃れた王女の孫探しとが二本柱だが、それら本筋はちょいちょい脇に追いやられ、その場限りの様々なエピソードが散発的に挿入されるのが不思議。ただ、そうやって不思議な寄り道をしながらも、最終的にすべての要素が納まるべきところに納まる展開は、まさしくミステリの味わいで、読めば満足感は得られる。

 嫌われ者がちゃんと嫌われるように書かれてあるので、その点は不愉快で面白い。悪役が際立つというのは、面白い小説の条件のひとつである。また、文章は会話が主体なので、読みやすさは抜群。

●お願いしていた私家版の冊子が届いた。
『いつわりの不死鳥』 笠原卓 復刻叢書
『真昼のわな』 笠原卓 復刻叢書
『夜を裂く』 笠原卓 復刻叢書